天国はまだ遠く/瀬尾まいこ著

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「天国はまだ遠く」 瀬尾まいこ(1974生)著
著者は「坊ちゃん文学賞」「吉川英治文学新人賞」に恵まれている。
新潮社文庫本   2004年に同社より単行本 2006年11月文庫化初版

 

 主人公の女性は仕事に絶望、自殺を決行するために地元を出、丹後の田舎に向かう。山里の客のいない民宿に入り、その夜、家を出るまえまでに貯めこんだ14錠の睡眠薬をいっぺんに飲んで床に就くも、2日間眠りこけて生還する。

 民宿の主、若い独身の男性に面倒をみてもらいながら、海や山のある生活、自然の息吹との触れ合いを通して、精気を取り戻すも、丹後の田舎が自分の居場所ではないことを悟り、帰ることを決意。

 文庫本の裏表紙には「心にしみる清爽な旅立ちの物語」との評があるが、作品のどこにも、新しい旅立ちを約束するような、今後の人生に成功を予感させるような確かな暗示はなく、その意味ではきわめて曖昧模糊とした展開というしかなく、裏表紙の言葉は完全なコマーシャル。

 作者自身が教師で丹後に赴任したことがあり、そこで自然や風物詩に接したことがモチーフとなって、この作品が紡がれただけの、真実味に欠け、深みがなく、ましてや読み手の心を鷲掴みにするような迫力などはさらにない。

 むしろ、主人公の女性はいずれ遠くない将来、再び自殺を思い立つのではないかという想像の方が「新しい旅立ち」という表現以上に色濃く、読み手の脳裡には残ってしまう。

 手厳しい評となったが、以上が読後の正直な感想。


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