天国はまだ遠く/瀬尾まいこ著

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「天国はまだ遠く」  瀬尾まいこ
2005年6月 新潮社から単行本
2007年11月 同社から文庫化初版

 

 家族関係、知己との関係、会社での人間関係すべてに挫折し、自殺するつもりで京都より北に存在する、日本海がよく見え、山林に覆われた田舎の民宿にたどり着き、初日の夜に14,5錠の睡眠薬を飲んで寝てみたが、二日間寝たきりになったきりで、自殺に失敗。

 以後、民宿(といっても長期間客が来ていない)を経営する若い男と二人だけの暮らしを20日間ほどし、周辺に暮らす年寄りとも親しく交わるようになって、田舎の良さ、清らかさをしみじみと感じ、結局は自殺を諦め、帰宅していくまでの話がストーリーの軸になっているが、作者自身が丹後地方の中学校で教師をしていたときの実話から発想された小説らしい。

 主人公の女の子の個性も、民宿の経営をする男性の個性も、それぞれに奇抜であり、奇異でもあり、20日間も二人だけで同じ家に暮らしながら、男女関係は一切ないという展開もユニークで、それなりに面白いが、ひょっとしていずれは二人は結ばれるのではないかとの期待もあって読み続けたが、淡々とした関係は最後まで変化せず、読者にもよるが、そこが面白いという読者と、やや物足りない感じを受ける読者とがいるだろう。

 一つ気になったのは、神経質で小心な女の子が、鶏が嫌いで、しかも目の前で絞められた鶏の肉を、その日のうちに口に出来、美味だと評価したのは、現実としてありそうにない。もし本当の話だとしたら、この主人公はよっぽど変わった女の子ということになる。鶏が絞められるのを見てしまったら、その肉を口にはできないというのが平均的な人間の示す反応だと思うから。


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2 Responses to “天国はまだ遠く/瀬尾まいこ著”

  1. 鬼が島 より:

    コメント感謝!
    私も文章書きが好きで色々書いています。
    宜しくどうぞ~♪

  2. くみ より:

    私、この本大好きです!
    主人公と田村さんが恋愛関係にならないところがまたいいと思いました。
    読んでてほっとする作品です。

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