天皇になろうとした将軍/井沢元彦著

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天皇


  「天皇になろうとした将軍」  井沢元彦著 

   小学館文庫刊

 表紙を一見して、「こりゃなんだ」と思ったほど、けばけばしい。

 本書はほぼ同時代の史実を二つのテーマに分け、後醍醐天皇と足利義満を主体に、二誌に別に書いたものを本文庫におさめたもの。 正直にいえば、そのため、それでなくともダブりが多く、灰汁もあり、しつこい文章が一層しつこくなって、インパクトを増しはしたものの、辟易感も否めない。

 

 解説を受け持った早稲田の考古学者、吉村作治先生が「そのことが全体を立体的に理解できるよすがとなっている」との評を記しているが、確かに、そうした印象はある。 また、この先生の解説のなかに、「考古学では、あるべきものがなかったり、あるべきでないものがあったりすると大変で、これを解決しないと次へ進めないが、一方、歴史学ではあるべきものがなくても、存在する資料だけで論考できると考えている歴史学者がいる」ことを指摘しつつ、井沢さんが「考古学的な発掘姿勢でものを掘り下げる」点に、他の歴史家の著作にない魅力を感ずるというようなことを書いているが、これは卓見というべきだろう。

 井沢さんの文章に毎度辟易しながら、彼の作品を飽きずに読み続けている事実はいったいなにかと考えてみると、歴史を観るアングルが従来の歴史家と異なること、従来の歴史教育では考えられなかったし指摘もされなかった裏側がほじくり出される点に、快感を覚えるからにほかならない。

 とはいえ、写真で拝見する井沢さんの顔からは、灰汁の強さはもとより、頑固さとパワーとが、むかつくくらいの強烈さで、押し寄せてくる。 しつこさ、灰汁の強さをもう少しオブラートに包んで書いて欲しいと訴えても、聞く耳はもたないという容貌をしている。

  

 とはいえ、今後ともおもしろい著作を期待することに変わりはない。 ただ、参考にした文献、資料などは文末に克明に記して欲しい。


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