妻の浮気 男が知らない13の事情/池内ひろ美著

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「妻の浮気」 副題:男が知らない13の事情
池内ひろ美(1961年生)著
新潮新書 2005年5月初版

 
 著者が「あとがき」で触れているように、『妻の浮気』というタイトルに合わせて、どちらかといえば困った妻たちのケースを採り上げているため、「おバカな相談」だったり、文中の『私』がとても意地悪な対応を行ったりする場面が多いと釈明しているが、著者の業務は「東京家族ラボ」という名のオフィスで人生相談を受ける立場であり、本人も離婚、再婚を経験した中年女性である。

 本書はたぶん数千件におよぶ相談事から特徴的、一般的、あるいは顕著な内容を含むものを抽出したのであろう。

 著者の「あとがき」ではないが、相談にやって来る女たちのほとんどに共通するのは衆愚であり、人間としての思考にも志向にも偏狭な部分が多く、精神状態に欠陥すら感じさせる。一方、相談を受ける側の著者、池内さんは聡明にして賢く、IQの高い人であるため、相談にやってくる女たちの愚昧さ、ボンクラ度が、著者の意図したものではないにしても、読み手に逆に強く伝わってきて、「まともな人生相談」という印象はきわめて希薄。もっとも、まともな人間なら、自分の問題は自力で解決するのであろうが。

 ただ、衆愚であろうが、賢明であろうが、日本国内にも、(単にアメリカを追随するかのように離婚、再婚が増えてきたという問題ではなく)、電化製品の進歩、少子化、結婚をしない男女の増、などなどのために女たちが時間をもてあます、といって悪ければ余裕ができ、外出する機会が増え、パートで金銭を得る機会もあり、外で浮気したり遊んだりするチャンスに恵まれるようになっている社会的な情勢変化にこそ問題の根がある。というより、男女の別なく、人間が本来的にもっている動物としての本性が時間的余裕とともに露出してきたともいえるだろう。

 ここで想い起こすのは、以前ブログに書評した「ポリー・アモリー」で、「一夫一婦制度」のもつ倫理観に、一般人がなんとなく疑問を感じ始めているのではないかという気がする。ある人が「女が経済力をもち、強くなれば、それは必然のことだし、男が大人の女を相手にできず、小児性愛者に走るのも、そういうことと無関係ではあるまい」といったが、その言葉にも一理ある。

 「結婚したら最後、結婚相手以外の異性を愛してはならない」というのが本来、キリスト教国をはじめとして決められた「一夫一婦制度」であり、別の異性を愛してしまうと、即「不倫」という、とてつもない悪事を働いている印象を与える社会構造になっている。生涯にたった一人の異性を愛し続けることができたとしたら、それこそ「奇蹟」と呼ぶにふさわしい

 これまでの社会の仕組みに遠くない将来、変革が起こりそうな気配を感じているのは私一人ではないだろう。つまり、だれもが複数の異性と堂々とセックスの可能な社会、そういう社会が、たぶんアメリカあたりを震源地として誕生するかも知れない。日本人にはそこまでアドベンチャラスな精神は欠けているからで、アメリカに追随することでしか可能ではないと思われる。

 著者の「女にとって性交ばかりがセックスではない。軽いキス、ハグ、手の指をからめあう、髪を愛撫する、温かみのあるムードでスムーズな会話をすることも、その範疇に入る」との言葉は女性が雰囲気を大切にし、雰囲気から気分が醸成される過程を暗示している。(セックスそのものを積極的に求る女だって存在するが)。

 「冬ソナを勝負下着で見てる母」という川柳が紹介されているが、これにはさすがにギャフン。こういう母親こそ「超脳足りん」というにふさわしい。

 現状、日本では、浮気がばれたとき、妻は夫の相手に嫉妬し、憤怒を覚えるが、夫は妻の浮気相手にではなく妻に怒りを覚える。これは夫にとって妻は所有物であるという意識からくる世間的面子、プライド、見栄にベースしているからだとの指摘がある。

 最後に、著者の美しい顔写真が表紙にも裏表紙にも載っている。出版社の編集、営業の両サイドが、こうすることで本書の売り上げに寄与するとの判断をしたのであろう。(女性作家の場合、写真はおろか、年齢まで記さないのが最近の傾向だから)。しかし、同時に覚悟すべきことは、世の男どもが美人医師や美人教師で、そのうえに厳格さが加わると一層、「この女、あのときどんなよがり声をあげるのか」「この女、オーガズムのとき、どんな表情をするのか」という劣情をともなう想像を鼓舞することである。本書の場合、タイトルが「妻の浮気」であれば、一層そうした危惧は無視できない。

 最後に断っておくが、本書にしばしば登場するバリ島の男は「日本の女が好き」だから寄ってくるのではないこと、「日本人ならだれもがお金をもっていると思う」から言い寄ってくることを明記したい。バリ島に駐在した経験からのアドバイスである。


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