妻恋坂/北原亜以子著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

妻

  

  「妻恋坂」  北原亜以子

  文芸春秋 2003年3月 単行本

  文春文庫 2007年11月 初版


 本書は八つの短編でなっていて、いずれも江戸時代の庶民の生活を軸とした物語だが、その生き様に際どいものがあり、そこが物語りの魅力となっている。ただ、ハッピーエンドといった短編は一編もない。


 大体において、構成も巧みだが、部分的に繋ぎの悪いところ、雑な部分などがあり、作者はもとより、編集者がしっかり目を通したのかと思えるところがあって、たとえば、藤沢周平の作品と比べれば、円滑さに欠けるうらみがある。


 八編はそれぞれ下層の人々の人情の機微を描いたものだが、登場人物が同じ庶民ばかりで、編によって武家だったり、大商人だったり、老中だったりしないため、ストーリーを追わせる魅力に満ちながら、読後に各短編の内容がごちゃごちゃに脳裏に残り、一編一編の記憶が希薄になってしまうところが残念といえば残念。司馬遼太郎のように歴史的に名を残した大物ばかりを書くことにも問題があるし、個人的に好きではないが、かといって庶民ばっかりというのも芸がない。

  


前後の記事

«  (前の記事)

(次の記事)  »

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ