宇宙は何でできているのか/村山斉著

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書評:ためいき色のブックレビュー-宇宙

  「宇宙は何でできているのか」 村山斉(1964年生) ¥800+税

  副題:素粒子物理学で解く宇宙の謎

  初版:幻冬舎より2010年9月30日

  帯広告:20万部突破 

 本書の帯広告には上記のほかに、「驚いた」「ワクワクする」「よくわかる」という、20万部が売れた背景も記されているが、「素粒子物理学で解く宇宙の謎」という本書のテーマを読み解く力が私にはなく、書評する立場にないことをまずお断りしたい。

 そこで、自分なりに納得のいったところを以下に列挙する。

*自然界の幅(宇宙)、10の27乗メートルと、素粒子の10のマイナス35乗メートルとの両端には62桁の距離がある。

*宇宙の起源はビッグバン直後であり、それは素粒子のつくる最小の世界。

*あらゆる物理現象には「エネルギー保存の法則」が成立し、プラスがあればそれに見合うマイナスもなければならない。ところが、中性子の「ベータ崩壊」という現象では崩壊前より崩壊後のエネルギーのほうが小さく、ここから謎解きが始まった。

 1950年代には実験室で、1987年には日本のカミオカンデでニュートリノが検出され、1998年には宇宙に存在するニュートリノをすべて集めると、宇宙に在るすべての星とほぼ同じ質量になることが判った。

*太陽系は、天の川銀河全体の重力に影響されながら、秒速220キロ、1時間におよそ80万キロで動いており、地球の公転スピード(太陽を回る速度)は秒速10万8千キロ。

*天の川銀河は45億年後に隣のアンドロメダ銀河と衝突する。一方、その頃には、太陽が水素を使い果たし、ヘリウムだけを燃やし始めるため膨れあがり、結果的に地球を呑み込んでしまう。

*星も銀河も宇宙の主役ではない。星をつくっている原子とダークマター(暗黒物質)をあわせても、宇宙全体の

27%に過ぎず、ダークエネルギーを想定せざるを得ない。宇宙が膨張していることも、膨張が加速されていることも、ダークエネルギーが関与していると考えなくては宇宙の7割を占める得体の知れないエネルギーを説明できない。

 原子を解体すると、電子とクォークという素粒子になる。

*すべての物質には「反物質」が存在するが、現在の宇宙には反物質が見当たらない。

*暗黒物質は望遠鏡に映る星や銀河の光の歪み具合を分析することで、分布を推測できる。

 我々が見ている月は1.3秒前の月であり、太陽は8.3分前の太陽。天の川銀河の隣に存在するアンドロメダ銀河は230万年前の姿。

*二世代目のカミオカンデは太陽からのニュートリノを捕まえ、太陽の写真を撮ることに成功、核融合反応が起きていることを証明した。太陽は1秒に50億KGの質量を消費してエネルギーに換えているが、これを「質量欠損」という。

 なお、スーパーカミオカンデの最大の建設目的は「陽子」が崩壊されるところを観測すること。

*「神はサイコロを振らない」はアインシュタインの残した有名な言葉だが、量子力学の世界では「神もサイコロを振る」。

*ダークマター(暗黒物質)は宇宙全体の原子の約5倍もあり、正体は不明ながら、その重力がなければ、太陽系や銀河自体が成立しない。それを教えてくれたのは吉田直樹氏が手がけるコンピューターによるシュミレーションだった。

*ニュートリノは「物質の起源」のみならず、「宇宙の起源」そのものについても大きな鍵を握る存在なのかも知れない。

*宇宙がどうなるかは暗黒エネルギーがどの程度のペースで増えているかによって違ってくる。エネルギーが増えれば宇宙膨張の加速もどんどん進み、やがて無限大に達し、宇宙は終焉を迎える。

 本書の特徴は「語りかける」文体にあり、そのために「解りやすい」という錯覚を招いているように感じた。少なくとも、私には、内容の濃さは認めるが、決して解りやすくはなかった。

  


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