小泉八雲集/小泉八雲著

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「小泉八雲集」 小泉八雲(本名:ラフカディオ・ハーン/1850-1904)著
訳者:上田和夫
1975年3月15日 新潮社より文庫化初版 ¥590+税

 

 ラフカディオ・ハーンの履歴は複雑。

 本人はギリシャで生まれたが、父親はアイルランド出身のイギリス軍医。イギリスとフランスで教育を受け、1869年に渡米し新聞記者を務め、1890年に特派員として初めて来日。小泉セツと結婚し、1895年に日本に帰化、9年後に54歳で逝去。

 本書には50篇以上の短編が収められているが、ほとんどは日本に古来から伝わる、きわめて日本的な迷信、妖怪変化、怪談、心霊現象、祟り、因縁話、夢枕、幽霊、化身などを網羅した非科学的な物語であり、作者自身が日本を「霊の国」と言っているように、よっぽどこうした話が好きだったらしい。ある意味で、ネス湖のネッシーに騒いだり、魔女狩りに夢中になったり、古城の幽霊話の好きなイギリス人的精神に相通ずるものがあるのかも知れない。

 高校生時代に読んだときの記憶を辿ってみたが、「耳なし芳一」と「停車場にて」の二篇しか本書には出てこない。後者の「停車場にて」は上記したような迷信がらみの話ではなく、日本人警察官が殺人犯を護送中に、熊本の駅前で殺された男の子供(男子)を犯人に引きあわせ、「目をそらさないで、おまえの父親を殺した男の顔をじっと見なさい」と言い、子供に直視された犯人は「悪かった」と心から悔恨の涙を流し、謝罪し、従容として処刑の場に赴く覚悟を語るという話だが、この話が私には本書を読んだ後もなお最も印象深い。

 また、作者が居住していたのは出雲を中心とする裏日本(若狭湾以西)だが、「日本人は誰も自分の家に鍵をかけない」と驚嘆したとは有名な話である。

 明治時代、東京や横浜でなく、田舎に居住していたことで、この種の話題にこと欠くこともなく、色んな人から話を聴き、資料などを漁ることもできたのではないかと想像する。

 帯広告に、俳優の佐野史郎が「小泉八雲は海から渡ってきた神様だ」とあるが、それは過大な評価というしかない。


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2 Responses to “小泉八雲集/小泉八雲著”

  1. withyuko より:

     佐野史郎さんの帯、見るとこの本が欲しくなりますよね?

  2. hustler より:

    withyukoさん、出版社のコマーシャルが上手なんですね。

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