屋久島ジュウソウ/森絵都著

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屋久島ジュウソウ

「屋久島ジュウソウ」  森絵都(1968年生)著
2009年2月25日  集英社より文庫化初版
¥514+税

 

 本書は、2002年に発表された「Slight sight-seeing」に、2005年に発表された首記タイトルの二編が収められ、2005年に単行本で刊行された。

 初めに、「ジュウソウ」という言葉を、集英社の社員を加えた作者一行の誰もが「重装備」だと思っていたという、これから九州一の標高を誇る山に登ろうとする者としての心構え自体にミスがあったとしか思えない、言葉を換えれば、屋久島登山を舐めていたとしか思えぬエピソードである。

 「ジュウソウ」とは、登山家なら誰もが「縦走」であることを知っているし、山頂から山頂へと尾根歩きすることと諒解している。日本国内での縦走登山としての代表的な例としては、たとえば、富山県の宇奈月から剣岳の雪渓を昇り、立山連峰の尾根から尾根を歩き、北アルプスの主峰である槍ヶ岳、穂高まで縦走するルートがある。

 無知がこの屋久島縦走を厳しいものにするという経緯が語られているが、食事内容の豪華さには、登山の経験のある私としては声もなく、読み進めたが、日本最古の縄文杉(樹齢6千百年とも、7千2百年ともいわれる)を見た作者の感慨として、「魂の離脱した、抜け殻、屍(しかばね)という感じだった」という言葉は解るような気がした。

 思ったことを遠慮なくずばっと発言する作者らしいコメントとして、機内食のテイクアウトの件がある。ある客が機内でテイクアウトを申し出るが、これに対し腰を低くし、礼を尽くしつつ、断るキャビンアテンダントを見て、「ずばっと断ればいいだけだ」と感想を述べているが、過去にテイクアウトした客が当日の深夜になってそれを食したところ中毒を起こし、保健所に訴えたことでシリアスな問題となったという経緯があり、以来、航空業界ではテイクアウトを拒むようになったという事実を作者は知らなかったようだ。要するに、テイクアウトする客がいつそれを口にするのか、予め判断できないという実態からの決断である。

 本書は先に発表されていた「Slight sight-seeing」が主で、それだけでは一冊の本としては量が足りないところから、「屋久島ジュウソウ」を考えたらしく、一人旅に終始、世界のあちこちを体験し見聞した前者のほうが作者のストレートな感想が生き生きとしているし、作者らしい冴えが感じられる。

 ことに、フランス人への悪口には胸がすかっとした。たとえば、(1)フランス人はフランス語が話せないといくら言っても、フランス語で話すことをやめない、(2)ショップ店員の傲岸さ、(3)美術館員の冷淡さ、(4)すれ違いざまに合掌やお辞儀のポーズでからかっていくフランス男のバカヅラ、などなど、4月に読んだ中村江里子の「わたし色のパリ」には決して出てこなかったニュアンスの話がずばり強調され、フランスを体験的に知っている人ほど、読者としては胸がすっきりする思いに満たされる。

 フランス人はフランス語をしゃべる人と、しゃべれない人とを、人間と虫けらの如くに差別待遇する、そういう国民性があり、そのことはカナダのケベック州(独立運動を過去に何度かやっている)を訪れても感ずる。

 ヴェトナムでは宗主国のくせに、戦いを放棄、アメリカにバトンタッチするなど小心な国民性が否めないが、上記からはフランス人のケツメドの狭さが伝わってくる。


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One Response to “屋久島ジュウソウ/森絵都著”

  1. zimmer2525 より:

    初めまして。
    流れに流れ着いたものです~
    >>フランス人はフランス語をしゃべる人と、しゃべれない人とを、人間と虫けらの如くに差別待遇する
    ほんとですね~もうまさにそのものです。
    博愛のはの字も感じられない国とはこのことです。ついでに平等すらも無いと感じました~
    おフランスにあるのは恐ろしい存在感を放つ〝自由〟のみではないでしょうかあ~
    乱文失礼しましたー。

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