川の名前/川端裕人著

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書評:ためいき色のブックレビュー-川

  「川の名前」  川端裕人(1964年生)

  2004年 単行本初版

  2006年7月10日 早川書房より文庫化初版 ¥700+税

 この小説は都会に失われた自然を子供たちに取り戻し、自然に触れることの喜びを伝えようとの目的を秘めて書かれたように思われる。

 筆者の意図するところのものは達成されていると思われるが、反面、ストーリーの展開と扱われる素材とにやや仰々しいものが感じられ、長すぎる文章も本来の清々しさを阻害しているようにも思われる。

 ただ、戦後の経済成長がもたらした犠牲や禍の大半は川に対してであり、河口に対してであることを思い出させられた。川の生態系は川周辺で生活する人々によるゴミ投棄、工場による廃水、ダム建設などにより徹底的にいじめられ破壊された。とくにダム建設による生態系破壊は永遠に復元されることはない。

 経済成長が生態系の大きな損失、犠牲によって達成されるのだとは、当時、誰も思わなかった。

 本書はそういうことをあらためて思考の中枢に運んできて、現状と未来を思い描くことを強いもする。そして、今、中国が経済の発展と同時並行してかつて日本が犯した罪と、舐めた辛酸、陰惨を経験しようとしていることに思い至る。


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