巨人たちの俳句/磯辺勝著

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kyojintatinohaiku

「巨人たちの俳句」
磯辺勝(1944年生/エッセイスト・俳人)著
副題:源内から荷風まで  平凡社
2010年4月15日 新書初版 ¥760+税

 

 タイトルにある「巨人たち」とは俳句の世界に生きた俳人たちではなく、俳句を終生の友とした、俳句とは別の分野で名をなした人のことで、かれらが残した俳句を知ることにより、実像に近づこうとする目的で書かれたもの。

 採り上げられた巨人とは以下の6人だが、それぞれが句会で一緒した6人以外の人の句も紹介されている:

 永井荷風、堺利彦、南方熊楠、物外和尚、平賀源内、二世市川団十郎

 どんな俳句を残したのか、例を少し挙げてみる。

 

 永井荷風:   永き日や つば垂れさがる 古帽子

         気づこうて 空見る門や 枇杷(びわ)の花

         短夜や 大川端の 人殺し

         竹夫人 抱く女の 手の白き

 堺利彦:    下り坂、見えて涼しき 峠かな

         白壁に ぶっつけてみる 熟柿かな

         秋風に ふとる人の子 人の妻

         元日や まず叩き割る 厚氷

 竹久夢二:   花吹雪 狂女の髪の 煙りけり

 南方熊楠:   めぐりあふた 流れはなんの 因果経

         小春日や 猫が鼠を とるところ

         ぬき足で 吾酒盗む 寒さかな

 物外和尚:   白雪の 上なにもなし 富士の山

         極楽も この通りなり 盆の月

         水くめば 山を動かす 冬の川

 良寛:     青みたる なかに辛夷(こぶし)の 花ざかり

 白穏:     いが栗や 笑ふ顔にも つぶてかな

 平賀源内:   井の中を 離れかねたる 蛙かな

         虫の音も 葦(あし)の底なる 長夜かな

 二世市川団十郎:足跡や 霜に小さし 石たたき

         冬山や のぼりてみれば いろはに帆

         家ことに 海士(あま)も髪ゆふ 月見かな

 

 本書に収められている俳句はかなりの数におよび、大半の句に解説があるけれども、残念ながら、期待したほどの内容ではなかった。

 さらに、「かれらにとって俳句は単なる趣味ではなかったし、残した俳句は趣味といったレベルを超えていた」というほど心に響く句作もなかったが、当方のセンスの問題かも知れない。


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