幼児化するヒト「永遠の子供」進化論/クライブ・ブロムホール著

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幼児化するヒト

「幼児化するヒト」
クライブ・ブロムホール(イギリス)著
副題:「永遠の子供」進化論
訳者:塩原道緒
帯広告:人間の起源と行動の拡大新理論
原題:「The Eternal Child」
河出書房新社  2005年4月初版

 

 本書はあくまで人類の進化をたどる上での「仮説」であり、新しいタイプの理論であるが、内容的に「独断」や「偏見」が含まれている可能性も否定できず、理論の真実性への疑問、不審が泉のように噴き出したためか、久しぶりに読了までに疲労困憊した。

 筆者は1961年生、イギリスのTV番組「Human Sexes」を製作する人物で、大学で動物行動学を専攻したとあるが、同じ専門の教授「デスモンド・モリス」の書いた「裸のサル」に触発され、そこに本書を著す動機があったと推察される。ちなみに、著者はデスモンド・モリスとは親しい関係で、本書に序文を提供している。

 理論の構築にあたって、証拠立てをするために数百万年前の人骨から、石器をはじめ、世界文明の古今東西の資料、文献を手当たり次第に漁った様子や、経緯が手にとるように伝わってくる。

 残念ながら、私にはこの理論に「ひょっとしたら」という気持ちもないではないし、教わることも僅かではなかったが、信憑性については基本的に賛同しにくい。

 理論の柱となっているのは、人間の知恵、知能が、頭のサイズが大きく成長したにも拘わらず、数百万年という長い期間、進歩しなかったこと。具体的にいえば、単純な石器の発明後、石器に矢や槍をつけて武器としての役目を果たすことに気づくまで長期間を要した事実を付言。

 さらに、母親が中心となって男たちから本来もっている攻撃性を奪い、男が基本的にもつ乱婚嗜好から一夫一妻のパートナーにするために幼児化への道を進め、そのために生後の子供が成長するまでの時間を途方もなく長い時間がかかるようにさせた。母子の接触度を高め、絆を深め、互いに離れがたい関係を意図的につくりだし、それを遺伝子にまで組み込んでいったことが、結果として、女の望む一夫一妻のパートナーとして育てることに成功し、平和な社会生活、活動が可能になったというもの。

 つまりは、「メスが主役」であり、「一夫一婦制度はメスの創造」によるもので、オスたちを彼女らの望む人間に仕立て、彼女らにとって「望ましい社会を構築した」ということだ。

 結果、「人間の幼児化は集団による生活を可能とした。大都会では1千万、2千万という人口が、エジプトのカイロでは7千万という人口が時折の喧嘩、犯罪、レイプ、殺人などありはするが、多くの雑多な人間が混在し、平穏に生活する状況を想定すれば、これは生物にとって稀有といってよく、人間にしか可能ではないことが理解できる。これこそは進化の新しいプロセスの成功といっていいのではないか」という。

 一方で、「現代の同性愛者、小児性愛者、性倒錯者、近親相姦、マザコン、マゾヒズムなどは、人類の幼児性が行き着くところまで行ってしまったことの副産物であり、これは私たち種が負わねばならない悲しい宿命である」と。

 (最近、確かに性犯罪に関するニュースが増えているが、同性愛も、小児性愛も、性倒錯も、近親相姦も、マザコンも、マゾも、サドも、人口差から絶対数は少なかったとしても、平均値でいえば、むかしから現代と同じレベルで存在したのではないか。ただ、時代がそれらが社会に表出、露出することを抑えたのではないか。 そのことは身体障害者のケースと同じではないだろうか)。

 また、「世界で最も幼児化が進んだ種族はモンゴロイドで、扁平な顔、小さな耳、小さな顎、かみ合わせの悪い歯、少ない体毛、男女差が少ない身体的特徴、薄く弱い体臭、(コーカソイドや二グロイドは一平方センチメートルあたり汗腺が約129あるのに対し、モンゴロイドは70)などを、その理由に挙げている。

 (そういわれてみて思い出すのは、ある大学の先生が、「大便と小便を同時に排泄できるのは東洋人だけで、白人にはできないといったところ、そんなことはあり得ないというアメリカの学者の前で、日本の学者がやってみせ、相手を感心させた」という話。毛が薄いことが幼児化の一端だというより、毛の濃いことや精力的であることや濃い体臭などは、より獣に近いと考えるのが実態に近いし、進化を逆に捉えている)。

 (服装倒錯の件では、日本の歌舞伎まで不十分なデータをべースに服装倒錯だと断言しているが、これは単純に幕府が女が舞台に上がることを禁止したためのやむを得ぬ措置で、その時代が長く続いたため、男が女形を演ずることが伝統となったに過ぎず、服装倒錯とは基本的に関係がない)。

 また、「小児性愛者」の点では、欧米人のほうが日本人よりはるかに多いにも拘わらず、ロシア人だと思われる人間、ニコラス・ボーイノフという男が「日本の小児性愛は全国に普及している奇行」だという文を記述しているらしく、それを鵜呑みにして堂々とこうした意見を書籍に記してしまう神経も理解しがたい。このような侮辱的ともとれる文を書く以上、ニコラスという男がどういう人間で、どういう年代に、どの土地を訪問し、どのくらい滞在し、なにをどう目撃したのか、などなどをつまびらかにすべきであって、イギリス人の「ジャップを軽侮する姿勢」が見え隠れし、きわめて不愉快。

 ニコラス・ボーイノフという男は「Pink Samurai」という本を出しており、「日本人の母親への執着度がきわめて強いこと」にも触れており、精神科医の土居健郎という男もそのことを認めているとある。(母親への執着度と小児性愛とはもとより関係がない。 また、子供の母親への執着度が日本だけが格別に強いというのならば、その比較対象を地域ごとに説明すべきだ。 西欧における子供への躾が一般に東洋より厳しいということを知ってはいるが、アメリカ人の子供だって母親への執着度は決して弱くはない)。

 著者はなぜか日本語に「甘える」という言葉のあることを記し、そのことに特殊な意味があるかのような説明をしているが、英語にだって「Play the baby」という言葉があるし、子供が親に甘えること自体、なんの不思議もない。白人の男など、自分のガールフレンドに対して Play the baby をやっているではないか。

 著者がいうように、「中国人と日本人とに昔から男色好みの習慣があったこと」は歴史的な事実ではあるが、全体的に文献、資料の調査が杜撰(ずさん)であること、文の構成が拙劣で、話に繰り返しが多いことに辟易する。文の構成を再度検討し、話を飛ばしたり、ダブりを失くせば、3分の2のページ数で本書を書き上げることができただろうし、安価になるだけでなく、訳者はもとより読み手の時間を不必要に奪うこともなく、理解を早めたのではないか。

 人間が集団で生活でき、互いに協力しあう関係になって以後のほうが、戦で死んだ人間も多く、「戦争は犯罪ではないから」というのなら、植民地拡大時代にイギリス植民地の一つ、インドで阿片を栽培させ、それを中国に持ち込んで「阿片戦争」を二度も中国の清朝にしかけ、法外な賠償金をとったり、拠点を力づくで租借したりしたのはなんだったのか。

 イギリスがフランスと協力してオランダをインドネシアに駆逐し、インド、ベトナム、マレーを配下に置いたのはなんだったのか。アメリカ大陸に侵攻し、現地人のインディアンをほぼ皆殺しにした事実はなんだったのか。オーストラリア侵略時、タスマニア島の原住民を絶滅させた理由は何なのか。スペイン人やポルトガル人がメキシコをはじめ中南米各地で大量殺戮を行い、収奪を継続したのは何だったのか。十字軍をなんども中近東に派遣したり、中近東をいいかげんな国境線で分割、独立を認めた僭越な態度はなんだったのか、またフランスと協同し、ボルネオ島をマレーシア、ブルネイ、インドネシアに三分割し、それぞれの国境を決めた高飛車なやり口はなんだったのか。「ふざけるな」といいたくなるのは、われわれ東洋人である。

 西欧人、ロシア人がこぞってユダヤ人を迫害、殺戮し、離散を強制したのはなんだったのか。また、奴隷をアフリカからアメリカに大量輸送したのはなんだったのか、それぞれ納得のいく説明をして欲しい。

 最も幼児化し、攻撃性の希薄化をなしとげた、「平和と協力」というシステムの最先端にいた、おとなしいはずのモンゴロイド、蒙古軍がチンギス・ハーンのリーダーシップのもと、騎馬軍団をインド、中近東を経て、ハンガリー、ロシアにまで攻め入らせたとき、かれらをタタール人(地獄の民)といって恐怖したのは西欧人だったではないか。これだって、当時存在したホルムズ王国への謝礼として贈った品物はもとより、使者を皆殺しにした応接のミスから怒りを買い、結果的に欧州までが蹂躙されただけのことだ。

 こうした歴史の事実が著者の理論を裏切っているように、私には思われる。

 大都会に多くの雑多な民族が暮らしつつも喧嘩や諍いが起こらないのは人間の幼児性ではなく、人間の知性、知恵というものであり、喧嘩、諍いのもたらすリスクやストレスや無駄な時間を避ける方向に向かうからだと考えたほうが妥当である。

 また、モンゴロイドの顎が小さくなったのは、稲作文化を早くからはじめ、狩猟生活から足を洗った時期が早かったからだ。 肉食の民が歯が丈夫で、顎が大きいのは当たり前のことではないか。 また、基本的に、縄文系の人間のほうが弥生系の人間より顎がしっかりしているのは生活のありかた、食生活の違いに起源があることで、これもあたりまえのことだ。

 一夫一妻制度が確立したとはいえ、古今東西に性風俗業が存在し、女が男を受け容れる施設は世界中どこにでもある。日本には男が女を客として迎えるホストクラブまであり、女には狙いの男がいて、性的交渉をもつケースは幾らでもある。

 オランダに「窓の女」があり、日本に「吉原遊郭」が存在したことは、男にとって相手への好悪は別にして、とりあえずの「はけ口」を求めた、いわば「トイレ代わり」だったといえるだろう。江戸期の花魁には、男と違い、好意をもたぬ相手との性交渉は(商売を除いて)拒絶する権利があったが、現代の男は嫌いでなければ、まるでトイレに小便をするように女を抱けるということだろう。それは、一つには、男の性的快感が射精の一瞬にあり、長く持続しないという肉体的条件が相手をした女への執着に繋がらないからである。

 著者の作品には思いつきや古い一片の記述を百パーセント信頼し、自説に役立ちそうな資料を内容の確認に充分な時間をかけずに拝借し、理論の信憑性を高めたことには作為が感じられる。

 結果として、本ブログをスタートしてからちょうど200回目の書き込みとなったが、この書評が最も長いものになったことに、不愉快、かつ不可解な感慨を覚える。 内容への賛否は別にして、包含する中身が多岐にわたるため、考えさせられることが多く、紹介されている一部の資料や文献にはそれなりに価値を認めざるを得ないという事情もあるからだ。とはいえ、 推測ではあるが、本書へは、理論の欠陥を突く、反論や反発が世界中から寄せられることだろう。

 次に記す、事項は、これからも参考となるので自分のために備忘録として記しておきたい。長くなるので、関心のない方は飛ばしてください:

1)「人間の大人はチンパンジーが胎児の状態のときに酷似している。(例:頭に毛髪がある、小さな歯、顎、頭の基部の関節が脊柱に繋がっている)。チンパンジーが生後、成熟するにつれて体毛が増え、四つ足で動けるように首がすわり、歯が大きく、顎も巨大化するのに対し、人間は幼児のまま発達が阻害された、科学文献でいう「ネオテニー」(幼形成熟)のままで存在する。生後、人間が最も顕著に変化するのは脚である。」

2)「チンパンジーと人間のDNAは95%-99%の割合で一致する(アメリカ・カリフォルニア大学のバークレー校のマリークレア・キングとアラン・ウィルソンの研究)。

3)「人間のメスの生殖器はチンパンジーの胎児とそっくり似ているが、人間のメスが生後も同じ形と位置を保つのに比べ、チンパンジーのメスはまず陰唇が欠落してクリトリスだけが露わになり、生殖器全体が下肢の股間から後方に移動し、後背位のセックスだけ可能にする。ところが、同じ猿類のボノボは成熟したあとも、外陰部を変えず、陰門の位置も下肢の中間に近く、後背位よりも正常位での交尾を好む。」(ニューギニア島に棲息するボノボはいま絶滅の危機に瀕しているらしいが)。

4)「チンパンジーは成熟後の総時間のほんの5%以下しかオスを受け容れないのに対し、ボノボのメスは50%で、成熟した人間のメスが常に受け入れ可能という事実により近縁。 また、処女膜の生理学的機能を説明できる仮説はないが、処女膜は人間とチンパンジーの胎児にだけ備えられている。」

5)「人間のオスの陰茎には骨がないが、こうしたペニスをもつオスは人間だけであり、包皮が陰茎を包んでいるのも人間だけで、この点でもチンパンジーの胎児と同じ状態。ペニスが前面にだらしなくぶらさがって、ふにゃふにゃなのも人間のオスだけ。」

6)「自慰行為でオーガズムに達する競争したら、男は女に勝てない。ただし、女が男を相手とした性交では10分から20分はかかり、それを見て、男は女のオーガズムへ達する時間が自分たちより長いと錯覚する。」

7)「アフリカで発見された類人猿の化石で600万年前のものはすべて直立した類人猿のものであり、鮮新世紀の旱魃を生き抜いた四足の類人猿はいなかった。そのことは人間、チンパンジー、ボノボ、ゴリラは、いずれも単一の直立類人猿の祖先から分離したことの証拠のように思われる。人間だけが直立姿勢をそのまま保持した唯一の種で、ボノボは部分的に四足姿勢に戻り、チンパンジー、ゴリラは退行したといえるのではないか。」

8)「中国の皇帝、斉王は後宮に1万人の女性を抱え、一日に二人の女性をはらませることができるよう、精液を節約しておく方法を幼児期から教えられた。」
(オナニーをするくらいなら、女とじかにセックスをするように教えたということか?)

9)「インカ帝国のアタワルバ王は領内の各地に散在する宮殿に1500人ずつの女性をおいて、性的快楽のために奉仕させた。」

10)「古代バビロニア帝国のハンムラビ王も数千人の女奴隷を意のままにした。」

11)「アステカ王朝の皇帝、モンテマスは4000人の妾を抱えていた。」

12)「古代インドのウダヤマ王は16000人という記録的な数の妻をもっていた。」

13)「ベルギーの推理小説家、「メグレ警部」の生みの親、ジョルジュ・シムノンは50時間おきに違う女とセックスをした。」

14)「フランスの女優、マドモアゼル・デュポアは16,527人の男性の名前を日記に残したが、45年間、毎晩別の男とセックスをしていたことになる。」

15)「サウジアラビアのイブン・サワド国王は63年間に毎晩3人の女とセックスをした。生涯の延べ人数は65,000人におよぶ。」
(多くの女と交わりたいという欲求はどんな男でも同じだろうが、精力の強弱は人により異なる)。

16)「人間の性行動の多様性については長期にわたって研究が続けられているが、いまだに解明されていず、謎のままである。」(それは人によって指向するもの、嗜好そのもの、さらには相手により、年齢により、経験により、とくに女性の場合は可変的な側面を多く含んでいるからであろう)。

17)「一年に一度だけ、婚外性交を認めている土地は世界の各地に存在するが、これは婚外性交欲の抑制を目的としている。」
 (このことは、男女ともに婚外性交への欲求があることを暗示している。この制度はインドネシアのジャワ島の一部地域にもある)。

18)「卓上のメニューからどれを皿にとっても文句をいう人はいないし口論にもならない。飲食が法で縛られないように、同じ理由で性交の相手としてだれを選んでも法に縛られるべきではない」といって「複合婚」を提唱したのは1840年代のジョン・ハンフリー・ノイズだったが、彼は13歳の娘とのセックスを告発され、逃亡、その後、複合婚の話は沙汰止みという形になっている。(小児性愛者は後を絶たないのに)。

19)著者は「一夫一妻への進化がなかったら、そもそも人間は存在していなかった。もっといえば、愛は人間という独特の種の出現に中心的な役割を果たしてきた」というが、かつて西欧では「女はあらゆる意味で男の所有物だ」との観念が存在したのではなかったのか。必ずしも「愛」と呼ばれるにふさわしい家庭生活がだれにも保証されていたわけではないだろう。
(また、自分のパートナーを自分で決めることができず、親や親戚や周囲が決めてしまう状態が長く続いた国も土地もあり、そこに愛が芽生えることもあり得るとは思うものの、大半の女性にとっては受胎し子をもうけるための機能だけが評価されたのではなかったのか。そのことは、欧米でも、「女性がオーガズムを感じなくとも受胎可能である事実」を学者、教会関係者が誇大に発言、女性性器の一部切除を実際に行ったことにも現れており、純粋に「愛」を標榜する姿勢には笑止という印象がある)。

20)「大人の愛の行為もしばしば幼児化に由来している。母と幼児とのあいだに見られることは、ほとんどすべての大人の男と女が性愛の場で再演している。体を寄せあい、添わせあい、キスする、愛撫する、幼児語でささやく、互いの名を子供じみた名で呼び合う。」

21)日本の古い文献に「性交中に舌を女の口に入れるな。興奮した女に舌の先を噛み切られる」というのがあるそうで、この一資料に基づいて、「日本にもむかしから西欧的なキスの習慣があった」と言い切ることには無理があるだろう。 短絡というしかない。

22)「少年がマウンテンバイクやレーシングカーに夢中になるのに比べ、少女は脅迫的なまでに馬に関心を向け、大人の男性の代用として馬に愛情を注ぎ、世話をする」

23)「女の胸は母親らしさという人間の女のアイデンティティを強め、男の心を惹きつける。豊満な胸、くびれたウェスト、大きな尻を備えているのが完璧な女性の体。大きな胸は格別に母親的な性的信号となる」
(私はTVで目にする叶姉妹の胸に吐き気をもよおすことはあっても、魅力や性的な刺激を感じたことはない。 適度な半球形のふくらみと、ツンと上を向いた形のよい乳首と、相応の感度を有するならば、それで充分魅力的である。すべての男がホルスタインとセックスをしたいわけではない)。

24)「人間のオスは母親から妻へ継ぎ目のない移行を求め、オスはメスの官能的な誘惑にますます弱くなり、手なずけられ、オスの望みである「できるだけ多くの女を受胎させたい」という欲求を棄てさせた。パートナーへの依存が人間に本質的な乱婚を許さない」
(「嘘でしょう」といいたくなる。イギリスでは、90%近くの男性、50%弱の女性が婚外性交をしているという統計が現にあるではないか)。
(人間のオスたちの願望は受胎欲求ではなく、蝶が蜜を求めて花から花へ飛ぶのと同じで、あの花にはあの花なりの、この花にはこの花なりの異なる味をもつ蜜が存在するからで、それは人間の女性の性的な反応の違いを賛美する男の習い性と同じ性質ものであり、異なる花を求める蜂と人間のオスの習性にはさして違いはない。 しかも、異なるものへの興味はオスたちの専売特許ではなく、メスたちにもあるし、時代の変化はそういう女性たちの指向をますます露出した形をとらせるだろう)。

25)「人間の脳の重さの変化について」
 250万年前:チンパンジーとほぼ同じ
 180万年前:チンパンジーの2倍、現代人の半分
 100万年前:現代人の3分の2
 40万年前:現代人の標準的な重さ、1.4kg

26)「チンパンジーは生後1年でおよそ2倍となり、成長が止まる。これに対し、人間は4倍近くのサイズにまで成長するが、これに20年間を必要とする。 成熟までに生涯の25%-30%が費やされる例は人間以外にない。」

27「脳の重さについて(脳の大きさや重さは知性の高さや質の良さとは無関係である)」
 欧州人の平均:1300g-1400g
 モンゴロイド:1400g-1500g
 フランスの解剖学者、ジュルジュ・キュービエ:1830g
 ロシアの作家、イワン・ツルゲーネフ:2000g
 オリバー・クロムウェル:2231g
 バイロン卿:2380g
 アメリカの詩人ウォルト・ホイットマン:1282g
 脳の科学者、フランツ・ジョセフ・ガル:1198g
 1921年のノーベル文学賞作家、アナトール・フランス:1017g
 これまで確認された最小の脳は762gで、ゴリラの最大725gよりやや重い程度。

 ただし、脳に損傷を負ったり、脳室に髄液のたまった人の脳は平均人の半分か、100gしかないのに、IQが平均以上を示す例は相当程度にある。

28)「チンパンジーと同じサイズの脳をもっていた時代に、我々の祖先はすでに単純な石器をつくっていた。しかし、250万年前の石器と150万年前の石器を10個並べられても、どれが古くどれが新しいのか、我々に見分けはつかない。 そのことは150万年前の石器と15万年前の石器にもいえる。人間の脳はやたらにサイズを大きくしたにも拘わらず、単純石器から複雑石器に達するまでおそろしく長い停滞がある。この事実は人間の生後の成長が遅い事実とリンクしている。」

 「発声、発語に不可欠な解剖学的構造の多くは25-50万年前までは存在していず、構文や文法をふまえた実際的な言語が生まれたのはせいぜい5万年前である。進化の過程で、言語が遅れたのは手と口の動きが脳によって制御されているためで、複雑な道具の登場が新しい手順を立案することは新しい語順を立案して文章をつくることと本質的に変わりないからだ。」 

29)「世界で最も有名な記憶の天才、ソロモン・シェレシェフスキーは膨大な数字の羅列を記憶するだけでなく、何か月も、何年も前に見たものでも、思い出すことができた。しかし、抽象的なものを考えたりすることはできなかった。単語がニつの意味をもっていたり、対象にニつの名称があったりすると、ひどい混乱状態におちいった。彼の脳は退行しているといったほうが正しい。」

30)「私たち種の脳が急激な変化を示したのは、およそ5万年前である。考古学上の記録にはじめて装飾品や細工物や原材料の遠距離交換などが現れはじめ、石壁に絵が登場した。 脳の新しい配線構造は、意識を生み、抽象概念を理解し、思考する力を与え、芸術の創造に結果した。」

31)「同性愛は進化の生命源ともいうべき多様性の一形態。幼児化が同性愛の起源。幼児性が強いために、ルビコン川を渡ることができなくなる人間が現れる。異性を愛せない心理的状態。 むろん、同性愛にも他の側面と同様、遺伝的要素がある。平均的な人間より幼児化遺伝子を多くもっていると考えれば納得がいく。 むろん、同性愛は人間にしかないし、女より男の側に圧倒的に多い。」

32)「キンゼイの調べによれば、青年期の男子の30%が同性愛経験によってオーガズムを感じたことがあると答え、同性愛傾向のピークは十代であり、18歳以前である。ミネソタ州の35000人近くの若者を対象にした調査でも約10%が自分の性的指向についてわからないと応えている。」

(キンゼイ報告が真実だとすれば、仰天ニュースというほかはない。あるいは、西欧の女性に男を惹きつける魅力が希薄なのか)。

33)「同性愛者のほうが異性愛者より性交相手を驚異的な数で求めて行動する傾向がある。脳の感受性の低さが、少年時代のように、個体を同性同士の密着の段階にとどまらせるからだ。同性愛者の場合、成長速度がさらに遅くなって、ジェンダー特有の行動を示さない傾向が強い。加齢とともに、同性愛指向から異性愛指向に変化する人もいるが、発達の未熟が継続して、一生同性愛者であり続ける人も少なくない。」

34)「同性愛者には遊び心があり、その結果として、「芸術、美術、芸能の面で独創的なひらめきを示す人も少なくない。プラトン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、オスカー・ワイルド、フランシス・ベーコンなど、名を挙げればきりがないが、ピアニストにも同性愛者が多い。ゲイの就く職業に多いのは、芸能人、批評家、理容師、看護士、ペットケア、草花栽培、小売店 経営、教職者、聖職者などで、サービス産業にはことのほか多くの同性愛者が働いている。」

35)「オカマやレズに犯罪者はきわめて少ない。」

36)「アメリカの聖職者のうちおよそ20-30%が同性愛者。」

37)「オカマの数が多くなったことは繁殖衝動を抑止することとなり、メスたちが私たちの種を幼児化させてきた、その選択がうかつにも同性愛者をつくってしまった」 (最も幼児化されていると作者が言うモンゴロイドの中国の人口が増え続け、13億超にまで達している事実はどう説明するのか)。

38)「幼児化は同性愛者以外にも、マザコンやマゾヒズムをつくり、近親相姦や小児性愛者を生じさせた。」

39)「近親相姦に最も多いのは父親と娘である。暴力を利用するから必然的に多くなるのだが、心理学者のハーバート・マイシュの調査では、父娘の近親相姦の被害者である娘の23%は積極的にその状況の維持を促していた」。

40)「小児性愛者の90ー95%は男性である。しかも、女の子よりも男の子に対しての性的欲望が強い」。「モスレム社会では、子供の性的能力を抑圧せず、逆に刺激することも禁じていない。子供に性器をいじらせたり、子供を花嫁に迎えたり、あきれるほど早い年齢で婚約、結婚、性交することが可能。イギリスでも、1929年までは13歳から女児の結婚が認められていた」 (腑に落ちないのは「モスレム社会では、現在でも土地により女子割礼があり、クリトリスを切除し、女性がオーガズムを感じないように、つまり女性が必要以上にセックスが好きにならないように配慮されているとの伝聞があること)。

 41)「アイルランドのカソリック教会では子供への虐待がはびこって、1931年聖職者による密告で10歳以下の子供を対象とした性犯罪が多発していることが暴露された。最近では、アメリカのボストンのカソリック教会の区長、80人の聖職者が児童虐待を行ったとして、その名前を公表した。こうした事実は、私たちの種の幼児的な性質の悲しすぎるほど不幸な成り行きだ」 (それは社会的な監視がないからであり、聖職者に対する盲目的な信頼に問題の根があるのではないか。職業がなんであれ、人間が性悪な生物であることを暗示しているだけであり、私の親はしばしば「坊主と教師と警察官に悪い人間が絶えたためしはない」と、子供のころの私にいって聞かせた。

42)「服装倒錯者は女よりも圧倒的に男に多い。精神障害も、発達障害も、女より男に多いし、同性愛者も男は女の3倍。」

43)「男の子の出生後の死亡率が多いのは、未熟な状態で生まれるからだ。生後の発達も女の子のほうが早い。母親への依存度も男の子のほうが強い。はじめて学校に通うとき、男児のほうがはるかに深刻な「分離不安」を示す。思春期のはじまりも女の子のほうが早く、学業成績も平均して女の子のほうが上位で、男の子に幼児性がはるかに強い。」 (男性の幼児性は死ぬまで継続する。収集癖が強いのも幼児性の現れ)。

44)「人間は他の生物に比べ、とんでもなく変わった種。進化の過程で、否応なく、成熟から後退してしまったことに原因がある。しかし、その代替として、無類の社会的能力と知的能力を得ることができた。」

45)「ゴリラの睾丸(精巣)はハレムの四、五頭だけを相手とするため10gしかないのに比し、乱婚のチンパンジーの睾丸は60gもある。人間の睾丸はヨーロッパ人の平均で20g、中国人の平均で10g、アフリカ人の平均で25gである。」

 「睾丸のサイズはほぼ確実に全体的な幼児化のレベルを示唆する指標である。オスの睾丸が小さければ、それは一夫一妻の関係が優勢で、メスが婚外交尾をしないことをも暗示している。アメリカは多種の民族が居住する国だが、モンゴロイド系が最も安定した結婚生活をしている」。
(モンドロイド系は睾丸だけでなくペニスだってコーカソイドや二グロイドよりも小さいが、固さにおいてなら、モンゴロイド系のほうがコーカソイドより固く、臍に向かって立ち上がる。コーカソイドは精一杯で水平までしか勃起しない。ために、白人女性はモンゴロイドの男を相手にした場合、「あなたの持ち物は木の枝みたいね」と言う)。

 さいごに、もう一度いうが、本書はあくまで「仮説」であり、したがって欠陥も少なくない。仮説ではあるが、だからといって無視できるほど内容的に拙劣なものでもない。ある意味で、思考を飛躍させる礎を提供してくれるかも知れない。


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