徒然草 in USA/島田雅彦著

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書評:ためいき色のブックレビュー-徒然

 「徒然草inUSA」 島田雅彦(1961年生/法政大学国際文化学部教授)

 副題:自滅するアメリカ、堕落する日本

 新潮社より2009年7月20日初版・新書 ¥680+税

 最近、「自滅するアメリカ」というイメージでものを書く人が増え、これまでもその種の書籍の感想を本ブログに記してきた。

 本書も金融恐慌以後、末期症状を呈するアメリカを語り、あわせてアメリカによる戦後政策で宣撫され、対米従属への道を歩んだ日本もこのままでは明るい未来はないという見通しを吐露しているが、同種他書との比較を絶するような個性的な知見に溢れているかというと、そうでもない。あるとすれば、共産圏への好意的な姿勢。

 そのうえに、文の調子という点で一貫性に欠けているように感じられるのが気になった。

 あえて目に止まったところを以下に紹介する。

*アメリカに滞在中、米国民をよそ者の視点で観察しながら、日本がこのアメリカという国と同盟関係にあること自体が悪夢ではないかと考えた。平均的なアメリカ人は日本に興味がないし、日本を対等のパートナーなどとみなすアメリカ人に会ったこともない。

 (作者にはアメリカ滞在経験があるが、英語よりロシア語の方が得意らしい)

*民主主義は代表の首のすげ替えを容易にするという意味で、革命を礎に組み込んだ制度。

*カリフォルニア州の財政破綻に続き、いずれニューヨークやフロリダのような裕福な州の財政も破綻の可能性を秘めている。アメリカは50の州から成っているが、経済破綻が州と州との内紛を生む可能性すらある。

*資本主義は貧しい者をより貧しくし、戦争と恐慌をもたらし、人を死に導く。拝金主義者は人口的に圧倒的多数を占めるため、社会から善悪観が失われ、理性も倫理もすっぽり抜け落ちてしまう。「絶対多数の絶対幸福」こそがアメリカの理想と智恵だったはずなのに。

*アメリカ社会ではたった一人の成功者の陰に100万人の挫折者がいる。夢を叶えたければ、アメリカに行ってはならない。

*「共産党」のもつイメージ:アメリカでは「人殺し」、フランスやイタリアでは「インテリ」あるいは「貴族」、ロシアでは「時代遅れ」あるいは「保守」。

*文明の衰退、帝国の崩壊、文化の衰弱、すべての現象は「旅」をしなくなることから始まる。アメリカ人の大半は自分が生まれ育った町や州から出たことがない。いわんや、アメリカと関係の深いヴェトナム、アフガニスタン、イラク、イスラエルなどを世界地図で示すことができる人は稀。

 (かといって、日本人なら世界地理に通暁しているかといえば、そんなことは決してない)

*対米依存から脱却するのに、「在日米軍の縮小」を主張する小沢一郎だけがひょっとすると今後の世界戦略に適った政策を打ち出せるかも知れない。

 (著者の目には日中国交回復を実現した田中角栄と小沢一郎がダブルらしく、それは小沢が中国に橋頭堡をもち、中国の要人に接近する姿勢かららしいが、両者に共通するのは中間に金丸をはさんで、裏金をあたりまえのように取る鉄面皮ぶりのようにしか思えない)。

*中国通貨「人民元」が切り上げられたら、中国人の購買力は飛躍的に伸びる。

 (中国人はすでに日本の国土に不動産を買っている。中国人は、たぶん、中国政府を信頼していないし、中国が嫌いなのだ)

*パレスチナに対するイスラエルの暴虐は非人道的であり、虐殺以外のなにものでもない。アメリカがイスラエルをバックアップするのは、アメリカにおける僅かな数のユダヤ人の政権への影響力が強いから。

 (世界の金融はユダヤ人が仕切っている。日露戦争で日本が軍備を整えらえたのは、偏にユダヤ金融のおかげ)

*「日本病」とは、常に受動的で、長いものには巻かれ、出る杭は打たれ、自分の意見を口にせず、リスクを冒すことを恐れ、都合が悪くなると記憶喪失に陥る、アジアを蔑視し欧米へは諂(へつら)う、危機管理能力の低さなどを総称する言葉。

 (外交に疎く、物事に過剰反応するくせに、過去に己が犯した罪はあっという間に忘れ、羹「あつもの」に懲りては膾「なます」を吹き、自己卑下するのも日本人の特質) 

 

*かつて日本には藩の数だけ言語があり、多様性に満ちていた。それがここ100年で失われてしまったことに愕然とする。

 (どんな国だって、共通語で情報を流す方式を採っているし、そうでなくては国は治まらない。だいたい、藩が使ってたのは言語ではなく、ただの方言。この国では今でもTVで方言を耳にすることは日常茶飯。東南アジアではどの国も多くの方言が地域ごとにある。一つの言語を国語と決め、メディアで共通して使わない限り、同じ国の人々が意思疎通できない。方言が失われるのは、ある程度、必然の経過である)

 著者は「アメリカに占領、宣撫され、日米安保に支えられてきたことを、これ以上にない不幸」と言うが、もしロシアに占領されていたら、日本は南北に分断されていたのではないか?

 アメリカ人は戦後の日本に対し優しかった。(1)沖縄、西表島の川に多棲していたマラリア蚊を殲滅してくれた、(2)シラミだらけの日本人にDDTをふりかけてくれた、(3)脱脂粉乳を学校給食に提供し、子供らの栄養を補ってくれた、(4)占領していた沖縄を返還してくれた、など真珠湾を奇襲攻撃した日本人にけっこうフレンドリーだった。少なくとも、ロシアだったら、こういう友好的な姿勢は見せなかったであろう。ロシアは北方領土を戦後70年近い歳月が経過した今になっても返還しようという姿勢を示そうとしないし、今後も手放さないだろう。

 本書が2011年3月11日の大震災の後に出ていたら、内容もかなり違っていたのではないかと思われる。なぜなら、震災後に示された対日シンパシー、支援への具体的な言動、義捐金、現地での捜索、原発問題への関心と解決に向けての協力、どの点をとってもアメリカが最大だからである。


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One Response to “徒然草 in USA/島田雅彦著”

  1. withyuko より:

    テレビに出てらっしゃるのを見てすっごくカッコよかった印象があります。NHKの「日本と朝鮮半島2000年」という番組のスペシャル番組にリュ・シウォンさんとユン・ソナさん、笛木優子さんとでてたんですが、一番韓国や歴史について詳しかったし、リュ・シウォンと並んでも負けてませんでした。(笑)でも、島田さんの本で「ひなびたごちそう」という本を読もうとしたのですが、途中挫折しています。あんなカッコいい人が書くならさぞや個性的で面白い本だろうと期待したのですが、思ったよりおもしろくないんです。新聞に連載されていた「徒然王子」もあんまりでしたし。
     (  )のなかのhustlerさんのご意見のほうが面白いです。
     本当に3月11日よりあとに書かれていたら、内容が違っていたかもしれませんね。

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