従軍慰安婦たちの真実/山田盟子著

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「従軍慰安婦たちの真実」 山田盟子(1926年生)著
副題:1)戦争の習わしを蔑む
   2)50万戦中慰安婦の墓碑銘
元従出版社  2009年11月18日出版
¥1600+税
 

 本書の出だしはタイトルからの想像をはぐらかすかのように、きわめて唐突。

 それは、終戦後に戦地から帰還した元衛生兵の日本人将校が自分の幼い娘に対し、慰安婦に行なっていたのと同様の暴行、虐待を繰り返すという信じられない話で、その事実を作者に訴えた女性の「父親への憎悪」からスタートする。

 本書が網羅(もうら)する話には上記したもののほか、日本軍兵士が進出した東南アジア各地につくられた慰安所と慰安所に送られた従軍慰安婦の実態、さらには明治、大正、昭和初期、女衒(ぜげん)の手で貧困家庭の娘たちが香港、マニラ、シンガポール、バタビア(現・ジャカルタ)、サンダカン(ボルネオ島、現マレーシアの東部にある港)などに「からゆきさん」となって送られ、身をひさいだという歴史的事実。

 以上、三つの異なる話をリンクさせたのは「女の性と人権を考えるよすが」という作者の思惑であろうが、三つの話はそれぞれ独立した、それぞれ別々の史実であって、本書を読みながら、そのことが脳裏から離れなかった。

 娘を虐待したという父親は戦地(インドネシアのパレンバン)で慰安所を管理する仕事をしており、その折りの慰安婦体験が戦後になっても娘を相手に継続したというが、これはあくまで異例の個人的なドキュメンタリーに過ぎず、従軍慰安婦問題とは基本的に異なる話としか思えない。

 父親がまともな社会人としての知性、倫理観をもたぬ「犯罪者」というだけのことで、それ以下でも、それ以上でもなく、だから、作者が当該女性に対し、日本軍の代わりになったかのような謝罪の言葉を口にするのは、お門違いというもの。

 家庭における子女への性的虐待は現在でも欧州、北米のみならず、途上国でもほとんど日常茶飯事に起こっている。本書に採り上げられた女性だけが特別なのではない。教会の牧師が洗礼を受けた少女を辱める話など日常茶飯事といっていい。

 さらに、「カラユキ」さんの話は、日本が貧しかった時代に、親から売られた娘(大半は九州出身者)たちが長崎から船で東南アジア一帯に送られ、多くはその地で亡くなった話で、本書のタイトルとはまったく異質の次元にある歴史。

 ただ、太平洋戦争時、戦地が拡大するほどに慰安所ができ、慰安婦が送られ、各所で褌(ふんどし)一つの兵隊たちが行列をつくって自分の番を待つ姿からは、いったい日本軍兵士は戦争に行ったのか、慰安婦を抱くために行ったのかと疑いたくなるほど、日本の兵隊たちの醜さが際立っている。

 世界のどこでも戦(いくさ)があれば、現地の女性が犠牲になるのは歴史の伝えるところではあるが。

 ロシア兵が満州に侵略してきた後、多くの日本女性がロシア兵にレイプされたことも事実。

 感じたことをありのままに披瀝するが、本書は文章も稚拙なところが多く、誤植はいたるところにあり、2009年に上梓するのなら、編集者が若年層にも読んでもらえるように手を加えるべきだった。

 もし、本書に価値があるとすれば、従軍慰安婦たちの実態が数値として示されていることであろう。むろん、この数値に誇張や想像が含まれていないことが前提だが。

 新聞やTVの報道にもあるように、慰安婦として従軍した女性の大半は朝鮮半島の女性であるが、ほかに現地人の調達もあり、日本人女性も中国人女性も含まれる。

 以下は本書から知った「太平洋戦争における死傷者数」:

 1)兵士死者:246万人

 2)空爆による死者:48万人強

 3)原爆による死者:34万人

 4)空爆(56回)による負傷者:289万人強

 5)沖縄戦死者:島民10万人、兵士9万人

 6)戦中慰安婦の死者:50万人

 7)治安維持法で処刑された人:10万人強

 8)ソ連抑留者の死者:37万人強

 9)喪失戦艦:2394隻、死者多数(不明)

10)アジア人死者:20万人

 戦中慰安婦の死者の数が際立っているのが判る。 


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