悪女について/有吉佐和子著

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書評:ためいき色のブックレビュー-悪女

 

  「悪女について」  有吉佐和子著   新潮社文庫 

   2006年6月文庫化    1978年単行本初出

 主人公の女性を「謎」という座標軸において、27人もの第三者に謎解きをさせるためにその女性に関して語らせる、一種ミステリータッチの構成になっているが、この手法は、語り部がこれほど多くはなかったが、芥川の今昔物語をヒントにした作品(「藪の中」だったかも知れない)にもあったという記憶があり、そこから発想したのではないかという推測が先行したため、本書がことさら珍奇にも新奇にも感じなかった。

 むしろ、27人もの人物が同じ女性を語りながら、一向に問題の女性の核心に迫らず、それぞれが饒舌すぎて混乱を招き、真実が見えてこないことに苛々し、途中で「いいかげんにしろ」と再三放り出しそうになったことを告白する。

 そのうえ、謎の女性の言葉遣いが、懐かしくも、不快な、「ですのよ」「そう見えまして?」「ですわ」などのかつての山の手言葉が頻発され、28年前にはそういう言葉が生きていたことを図らずも知ったが、そうした言葉が全編に流れているために、いまの言葉でいえば「むかつく」のを禁じえなかった。

 解説者の「小説技巧の冴えに感銘を受ける」との評には、正直いって納得がいかなかった。27人もの人物を語り部にもってきたのは、人物に関する印象が強弱を通り過ぎて、むしろ希薄になってしまい、まどろっこしいというか、曖昧な印象が拭えなかった。

 私の知己に有吉佐和子のファンがいて、しきりに読書を薦められたことで読む気になったが、この文庫本が57回もの増刷を続けていること自体が私には不可解。 ただ、テレビでドラマ化されたときの評判は非常に良かったとは聞いている。

 


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