情事の終り/グレアム・グリーン著

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情事の終り

「情事の終り」
グレアム・グリーン(イギリス人)著
原題「The End Of The Affair」
田中西二郎訳  新潮文庫

 

 戦前に書かれた作品で、戦後の1951年イギリス版で初版。20世紀の恋愛文学のなかで最高傑作といわれるもの。50年以上経った作品という古さはそれほど感じない。男と女のことだからであろう。

 イギリス人の著作に共通するのは隠微さ、暗鬱さ、しつこさ、描写にも特有の細かさ、執拗さが、霧深きイギリスの土壌、風土を想起させる。

 ことに、テーマの源流には宗教がある。彼らにとって宗教のことは脳裏から離れないものの一つであるらしく、そのことが全編を色づけもし、考えさせもする主流であるため、わたしたち日本人には若干重い感じの作品かも知れない。アメリカのへミングウエイやイギリスのサマセット・モームとは違った味で、それを愉しむ構えで読んだほうがいいように感じた。

 内容は、「中年男の堪えがたい執着とエゴ」を「姦通」という話のなかで進展させ、読者を思いがけない終着点に連れていく、その点に、近頃、わたしたちの周辺には見ない卓越したものを感ずる人もいるだろう。

 ただ、「神」という言葉、「祈り」という言葉が頻度高く登場することは無宗教の人にはピンとこないだろうが、時代背景を配慮すればそれが世界の一部ではあっただろう。

 かつて「人妻との姦通」をテーマとした書籍は「チャタレ-夫人の恋人」がそうであったように、禁書だった。本書は解説によれば三島由紀夫が「美徳のよろみき」を書いたころに日本で発表され、以後、「よろめき」も「AFFAIR」を和訳した「情事」も、世間の人一般が使うようになり流行語にもなったそうで、それまでの日本では「情事」という言葉は「恋愛」あるいは「愛」という言葉で集約していたそうだ。

 さいごに「情事には終りがくる」が「愛には終りはない」という作者の言葉、そして「小説家は物事を簡単に割り切ったりはしないんです」という作者、グリーンの言葉をここに記しておく。ただ、「情事には終わりがくる」との意味は、「同じ相手との情事には終わりがくる」という意味であって、「人間が情事に倦怠する」ことなどはあり得ない。


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