旅する力・深夜特急ノート/沢木耕太郎著

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書評:ためいき色のブックレビュー-旅

  「旅する力・深夜特急ノート」  沢木耕太郎

  帯広告:かつての旅人へ、旅の途上にある人へ、これから旅立つすべての人へ

  2008年11月30日 新潮社より単行本初版  ¥1600+税

 本書には「深夜特急」の旅に出る際の経緯、心情から、知己らによるカンパ、深夜特急の本文からは漏れたエピソード、ロンドン以降の動き、帰国後の動静、友人や知己の反応、執筆に向かうまで書く力を醸成した過程、全編を書き終えるまで長い時間がかかった理由など、読者にとってフラストレーションとなっていた部分がかなり補われ、解消されている。

 さらには、「旅の適齢期」「他国を旅することに伴うリスク」「若いときの長旅がしばしば日本社会からのドロップアウトに繋がる可能性」など、エッセイとして書かれ、深夜特急がなお継続している印象をもたらし、読んでいて飽きがこず、同感することも少なくない。

 作者のどの作品からも感じられる清々しさ、男らしさが、どのように思索の深さや事象を見る柔軟なアングルに繋がっているのか、かねて不思議に思っていたが、本書に接したおかげで、作者自身の体質のなかに、他者からの影響に対して、私が想定していた以上の柔軟性、弾力性をあわせ持っていることを知った。

 また、私自身、旅に関連する仕事に従事していたこともあり、沢木耕太郎の深夜特急に影響されてバックパックの旅に出た若者を二人、海外で受け止め、希望に沿って雇用したこともあり、そのうちの一人は今でも私が受け止めた外国の土地に住み、みずからのアイディアを生かして店を経営しているが、もう一人は日本経済のダウントレンドのなかで、いわゆるドロップアウト組になってしまい、帰国後は田舎でガードマンの仕事をしつつ生計を立てている。

 久しぶりに一気読みさせられたものの、多少のダブりがあって、本来著者とは無縁のはずのしつこさが窺われ、その部分がやや気にはなった。


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