日本一の桜/丸谷馨著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「日本一の桜」 丸谷馨(1959年生)著
講談社現代新書 2010年3月20日初版 ¥880+税

 

 全国の桜の名所を挙げ、それぞれの桜の種類、規模、管理・維持の歴史、携わった人名などなどが紹介されている。

 なかでも、作者が賞賛するのは青森県にある弘前公園の染井吉野。

 桜の植樹本数のランキングは:

 (1)東京の多摩湖=4万本

 (2)大阪の五月山公園=3万5千本

 (3)奈良・吉野山=3万本

 (4)熊本県・市房ダム湖=2万本

 (5)岡山県・たけべの森=1万5千本

 「上記に比し」と作者は言葉を継ぐ。「弘前公園は2千百本で、ランキング外ながら、弘前公園の桜の特質は全体の70%が染井吉野で、1千7百本あり、1本1本が花で覆われてしまうほど圧倒的な量感があり、紅色が鮮明で見る者の心を打つ」と。太宰治もその著「津軽」のなかで、「弘前は日本一」と書いているが、弘前公園の桜に触れた文学作品や雑誌は枚挙に暇がないとも。

 そして、花見客の数を挙げる:

 (1)弘前公園:200万人

 (2)上野恩賜公園:190万人

 (3)秋田県の角館:126万人

 (4)秋田県の川堤:126万人

 (5)東京の小金井公園:120万人

 (6)静岡の河津:102万人

 (7)東京の千鳥が淵:100万人

 内容はよっぽど桜に興味がないと、読み継ぐことに飽きてしまうが、一つだけ学んだことがある。

「染井吉野は接木(つぎき)や挿木(さしき)という方法で増やせるため、生物上はクローンであり、いわゆる複製。したがって、満開時には花のボリュームが圧倒的であり、安価であることも手伝ってこの種を植樹する公園が増えている」

 染井吉野という種類は江戸の植木職人が二種を交配してつくったもので、全国に拡がった理由はこの種が葉を一切出さずに咲くため花にボリューム感があるからだという。

 本書は触れていないが、日本最古の桜は山梨県にある樹齢2千年という桜で、幹回りが12メートルと仄聞する。

 かつて西行が「ねがはくは、はなのもとにて 春しなむ そのきさらぎの 望月のころ」と読んだときに見た桜は自生種の山桜だというが、私個人も緑一色の山の斜面に山桜がぽつんとある景観に痺れる。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ