日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態/千葉明著

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書評:ためいき色のブックレビュー-中国人

  「日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態」 

  著者:千葉明(1959年テヘラン生まれ/現・法務省入国管理登録管理官)

  2010年7月26日 彩図社より単行本初版 ¥1200+税

 外国人の在留資格に関しては、法律的に煩雑さが多岐にわたり、且つ、知らぬ間に変更もされ、よっぽど興味があるか、自らが渦中にないと、関心をもってこの問題の深みは追わないもの。

 私が本書を手にした理由は、わが国がかつてヴェトナムのボートピープルが海外に押し寄せたとき、欧米諸国から批判されながら、日本は積極的にはボートピープルを受け容れなかったことが思い出されたことがあり、わが国も遠くない将来、移民に関し、腰を据えた議論と心構えが必要になると思ったからだ。

 「現在、日本国内における外国人在留者は中国人がトップで、次いで韓国人・朝鮮人、ブラジル人、フィリピン

人、ペルー人であり、中国人の在留登録地として最も多いのが長野県、日系ブラジル人は岐阜県と愛知県」だという。ただ、「日系ブラジル人への優遇策は孫の代まで」という条件つき。

 また、「在留者のなかで不法就労者が最も多いのが中国人であり、犯罪も中国人がトップ」。

 この作品には孫文がしきりに出てくるけれども、結局のところ孫文が中国の国づくりにたいした影響はしていないし、日本の政治にも特段の影響をしていない。孫文を懐かしい人材だとは思うが、ことさら歴史上の人物として本書に出す必然性があるのか、疑問。

 さらに、作者は「日本人はGNPで中国に世界第二位の地位を奪われたことに嫉妬している」というが、GNPは国民一人当たりで比較すべきであって、それならば日本と中国の差はあまりに歴然としているし、現時点では比較を絶している。嫉妬云々はチャンチャラおかしい話で、物事の本質からずれた議論。

 「支那は秦が淵源で、CHINAなど英仏独西の各国語に通じ、世界標準の呼称であるという主張があるけれども」などと言っているが、これが事実であり、この理屈のどこがおかしいのかさっぱり解らない。インドネシアでもマレーシアでも、中国を「チナ」(CINA)と呼んでいる。

 「在留中国人が指摘した日本人の長所は(1)勤勉、仕事熱心、責任感であるが、(2)短所は表裏があって偽りが多い」といい、さらに日本における中国報道が中国のマイナス面ばかりに集中していると批判している」との話があるが、お門違いも甚だしい。「表裏があって、偽りが多いのは中国政府」ではないのか?マイナス面がプラス面を圧倒しているのも事実。

 作者はなぜかは知らないが、一党独裁の中国の本質を見誤っているきらいがある。尤も、中国に民主主義が育つか否かは別の問題ではあるが。


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