日露戦争がよくわかる本/太平洋戦争研究会

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「日露戦争がよくわかる本」
太平洋戦争研究会 PHP文庫

 
 司馬遼太郎に「乃木大将」を書いた著作があり、この本が乃木という人物のイメージを根底からくつがえし、「無能」というレッテルが読者の脳裏にインプットされた。本書はその極端な評価から乃木を救っている。

 日露戦争時代(1904-5)の日本人、当時の世相、国際関係、ロシアの世情(ニコライ皇帝とレーニンの暗躍)、ロシア陸軍の実力、バルチック艦隊の実情などが手にとるように理解できる。そして、この戦争に勝利した日本人が大国意識をもち、戦争に勝利したことが西欧列強の植民地化にあえぐ東南アジアの国々に自信をもたせたにも拘わらず、以後、日本が西欧諸国と同じことを始めた歴史を俯瞰できる。

 司馬遼太郎が書いた「ロシア紀行」をあわせ読むと、興が乗る。ロシア帝国が毛皮を西欧に売って利益を得ていた事実、良質の毛皮を求めて東へ東へと侵入していった過程、結果的にほとんどコストをかけず、無人の野を行くがごとく領土を東方へ(果てはアラスカまで)拡大していった歴史が納得できる。

 要するに、アラスカに達するまで、北部はツンドラ地帯ということもあり、敵対する部族も民族もいなかったということで、大国に成り上がった裏舞台が理解できるし、そこに無限の地下資源があるとしたら、日本が鎖国一辺倒に孤立して、間宮がサハリンと大陸とが地続きでないことを史上初めて発見し、いまでもマミヤ海峡と呼ばれていることがあらためて悔しく想い起こされる。

 また、ロシアがアラスカをアメリカに売るという余儀なき立場に陥った歴史的な背景もわかる。ロシアに興味のある方には、ロシアへの好き嫌いは別にして、楽しめる著作である。


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