昭和史発掘 2/松本清張著

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松本


   「松本成長の昭和史発掘 2」  松本清張著 

     文春文庫刊

 ひとくちに昭和史といっても、いろいろだが、どの事件を採り上げるかで、松本清張の関心がどこにあったかが解り、そのあたりを探ると、知らなかった清張像が浮かんできて、一層おもしろい。

 1. 張作霖事件

 2. 谷崎潤一郎と佐藤春夫

 なかでも上記の二つに興味をもった。

 「1」は日本が軍国主義に陥っていく過程が見事に描かれている。 関東軍の横暴、突出によって太平洋戦争まで引っ張られていくさまが清張に特徴的なしつこさで追跡される。

  一つには幸運にも日露戦争に勝利したこと、二つめは第一次世界大戦時、西欧の列強が戦争に没頭している一方で日本はドイツの領土をかすめとって自国領土に加え(カロリン、マーシャル、サイパン、ヤップ、トラックなど)、戦時国に武器、弾薬、艦船を輸出して工業力を飛躍的に伸ばすことができたこと。この二つが、植民地を狙う帝国主義へと進む道を邁進させることになり、宿命的なものを感じさせる。

 「2」は男と女のこと。谷崎は妻の妹を、まだ15,6歳のころから連れ歩き、自分の女にしてしまう。この女性が「痴人の愛」の女主人公。佐藤春夫は谷崎がほうりっぱなしの奥さんに同情、それが恋愛感情へと変化。ついには谷崎に「奥さんと離縁してくれ、自分にくれ」といいだす。谷崎が春夫の求めに応ずるまでかなりの時間がかかりはするが、結局は実現する。二人の男の、女への考えや対応の違い、大きくは生き様を比較しつつ、筆が進められていく。

 

 「谷崎が惚れた妻の妹は当時まだほんの小娘だった。少年とも少女ともつかない中性的な様子が谷崎にとってなによりも魅惑的に映った」とのくだりからは、谷崎潤一郎もいまどきの「児童性愛者」的な素質や耽溺を濃厚に匂わしている。と同時に、こうした男女のことを昭和史に著した作者にも、いままで持っていた印象とはちょっと違う面を見た気がした。

 総じて、この本の評価は極端に分かれるように思われる。

 後に知ったことだが、谷崎が佐藤春夫に譲った妻は結婚前に膨大な数のラブレターを送った相手。

 


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One Response to “昭和史発掘 2/松本清張著”

  1. ayumiyori より:

    小倉城内にある清張資料館では、圧倒されました。おびただしい資料によく家が持ち堪えたものだと思いました。「痴人の愛」ではスリルを味わい、恋愛は三角関係で成立する(燃上る)と漱石の3部作のあとがきにあったことを思い出しました。

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