智恵子抄/高村光太郎著

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

智恵子


  「智恵子抄」  高村光太郎著  新潮文庫

 かつてのベストセラーを初めて手にした。 (受験時、作家の名前と作品名だけは記憶したが)

  主人公である妻の智恵子が「東京には空がない」と嘆息した言葉、そして作者の「文化のがらくたに埋もれて足の踏み場もない」という言葉からは、いまは亡くなってこの世にはない二人がもし現在の東京を見たら、たぶん「東京は腐っている」というのではないか。

 「文明は高度に発達すると急速に老衰する」という天文学者の言葉が想起され、日本人に一世紀後も倖せな日々が待っているのか危惧を覚える。

 智恵子は自然に恵まれた土地で育った純粋無垢な人。そういう人が都会に暮らしたために狂ってしまったのかも知れない。

 光太郎も、智恵子も明治生まれの人で、本書は二人の愛を主題とした詩集だが、表現を超えた辛さだけが読後に残った。

 光太郎は俳句もプロで、卓抜したひねりに忘我、その卓抜さに、私は俳句を続けることを放棄した記憶がある。


前後の記事

現在はコメントを受け付けておりません。

サブコンテンツ