東京タワー/江國香織著

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「東京タワー」 江國香織著
2001年12月単行本初出
新潮文庫 2006年2月文庫化

 
 この作者の作品に触れたのは初めて。

 あまりに青臭く、インパクトに欠けた、空虚感が身にしみた。

 解説者(本書を映像化した人物)は「少年たちの目線で描かれた恋愛物語、若い男たちが読んですんなり腑に落ちる数少ない小説」と評しているが、「いまの若い人って、そんなにレベルが低いんですか」と問いたくなる。

 「これが江国香織だ」という、独自性、癖、灰汁、そういったものに乏しく、濡れ場もおざなりで、知名度の高い小説家らしい筆力が感じられない。 きついことをいうようだが、40歳を過ぎた女性が作者という印象は希薄で、このレベルなら20歳前後の作家にも書けるだろう。

 あるいは、若い読者をあらかじめ想定して、かれらが読める言葉を使い、読める文体で、読める内容にまとめたのだろうか。だとすれば、「売らんがために書かれた小説」ということになる。 そのように推量する理由は、豊富にもつ語彙を駆使せず、できるだけ言葉を制御して書いた文章といった意図を感ずるからだ。

 作者の父親(江国滋さん)はすでに逝去して久しいが、俳人として有名だった。色っぽく、ユーモラスで、個性溢れる「俳句」が多く、私は滋さんの俳句に関する本はほとんど読んでいる。残念ながら、娘である香織さんの作品は、もっと読んでみたいという欲求には結びつかなかった。

 辛辣な批評で、江国フアンには申し訳ない気持ちだが、以上は正直な感想。


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