松井教授の東大駒場講義録/松井孝典著

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東大講義録

「松井教授の東大駒場講義録」 副題:地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る
松井孝典著   集英社新書 2005年12月初版 ¥700

 

 本ブログに同じ著者による「宇宙人としての生き方」を書評したことがあるが、本書ははっきりいって難しい。

 前作では「おばあさんの誕生」が一つのキーワードだった。ネアンデルタール人には生殖期を過ぎた女性の骨は発見されておらず、それに「発声機能」の不備が加わって、人口増加に繋がらなかったという話が出てくる。つまり、その時代の女性は閉経後、長くは生きられなかったということだ。

 本書はそういう問題をも含め、地球、生命、宇宙における太陽系惑星の誕生、天の河銀河における太陽系惑星の話、地球物理学の話に集中する。

 新たに知識として得た部分もありはするが、理解できない専門用語が機関銃のように速射されるため、読み返しのできる立場にあってすらチンプンカンプンの話が多い。 もし、講義を聴く立場だったら、追従できずに居眠ってしまっているだろう。 天文学関係の書籍はだいぶ読んだつもりでいたが、口頭で数式が告げられ、グラフが示されても、固くなった頭脳にはそれらを理解する柔軟性も容量もほとんどなく、悔し涙にくれたかも知れない。

 ただ、最終章で語られた次の部分は忘れがたく、記憶に強く残った。

 「太陽が光度変化を起こすと、地球は大気中に二酸化炭素を溜め、温室効果を防御するシステムで応じ、地球環境を安定させる。しかし、いずれは太陽光度が増加するにつれ、大気中の二酸化炭素は減少の一途をたどり、5億年後には現在の10分の1の量となり、結果として、植物は光合成ができなくなり、生態系の維持は不可能となる」。

 (もっとも、人類があと5億年生きられるわけはなく、光度変化を心配する必要はない)。

 「地上で分化してきた物質圏(生物圏を含め)はそれぞれの誕生順とは逆の順序で消滅する。最初に絶滅するのはむろん人類」。

 5億年というのは人類が誕生してからの年数よりはるかに長期ではあるけれども、「人類は地球が生んだ仇花」であり、「地球は宇宙が生んだ仇花」という印象が胸に深く突き刺さった。

 ただ、太陽による光度変化の影響より先に、氷河期が先に地球を襲うから、太陽の寿命よりはるか以前に人類は死滅するに違いない。また、現在、地球を覆う大気の組成は8割が窒素、1.2割が酸素、0.2割が二酸化炭素であるが、著者によれば、もし地球上の岩石に含まれる組成をすべて地表に表出すれば、大気のほとんどは酸素で埋まってしまうという話は初耳で、感銘を受けた。 酸素濃度が高まれば、ほとんどの生物が環境適応できずに死滅することを意味するからである。

 大気中の酸素濃度が上昇すれば、酸素ボンベに依存した生活を強いられている呼吸器に問題を抱えている人は酸素ボンベなしで、往来を闊歩できるのではないか。とはいえ、周囲の家族や友人、知己がすでて死に絶えて生きていたら意味はない。


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