枕草子/清少納言著

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枕

「枕草子」 清少納言著
角川フォフィア文庫  2001年7月初文庫化

 

 花鳥風月に現(うつつ)を抜かし、それを雅(みやび)であると自負して生きてきた朝廷を中心とする公家たちの生活が本書を通してよく判る。

 清少納言が生きた時代は、皇室、公家にとって最も安穏で、平和な時代だったし、自己主張することも出来た時代だったと思われる。

 平家一門に我が物顔をされ、宮中の人事にまで介入され、やがて源平の戦いを経、鎌倉幕府による政権樹立に続く戦国時代と、かれらにとっては悪夢のような時代に変容、16世紀に至って、ようやく徳川政権が樹立され、やれやれと思ったのも束の間、徳川は朝廷が生計を得られ、公的儀式をとり行なうために必要な最小限の収入しか許さず、260年間の鎖国時代に継続した平和は人々をして朝廷の存在を重くは思わぬ時代に変えたはずだ。

 私は高校生の時に、古文の時間に、少し触れただけで、「春は曙」が脳裡の奥にしみこんでいて、是非もう一度はじめから読んでみたくてページを開いたのだが、思惑と違って、75編以上の超短偏が「枕草子」というタイトルのなかに収められ、結局、私の心を捉えたのは、そのうちの一編「春は曙」だけだった。

 また、本書を通じてあらためて理解したことは:

1.舎人(とねり)などの身分の低い人間は世の例に漏れず、蔑視され、その顔の陽に焼けた黒さを、雪がまだらに降って土がところどころに出ている色にそっくりで嫌悪を催すとあり、明らかに差別観が存在したことのみならず、差別言句を平然と口にできたことをも物語っている。

2.貴族の女は顔を見られてはいけないという時代、成人したら、たとえ自分の娘でも、几帳を隔てて会うのがしきたりで、しかも扇で顔を覆い隠していたという。だから、結婚といえども、見たこともない男が三夜通って成立し、三日目の朝の光で互いの容姿、容貌を確かめ合ったという風習。(イスラム女性よりひどい)。

3.通い婚は、通ってくる男が一人だけとは限らず、複数の男と褥(しとめ)を共にすることがあり、男の側も複数の女性のもとへ通うケースがあり、性に関してはかなり放埓で自由だった。とはえい、子を孕(はら)んだとき、その子がどの男の子なのか判断できたのだろうか。あるいは膣外射精などというシャレたことをやっていたのだろうか。

4.京からの手紙はそれだけで都の事情や情勢が判るから、手紙だけで相手は十分な情報を得ることができる」という下りは、京以外の土地が低く見られていた時代背景が想像される。


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One Response to “枕草子/清少納言著”

  1. withyuko より:

     とても、びっくりしました!
    ほんとうに、いろいろなものをお読みになるんですね。「ヤクザという生き方」の次に、「枕草子」ですか?!でも、hustlerさんの「枕草子」って、高校時代に習った「枕草子」とも、このあいだ私が読んだ「枕草子REMIX」とも全然違う、新鮮な印象です。こういう読み方もあるんですね。

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