極北で/ジョージーナ・ハーディング著

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書評:ためいき色のブックレビュー-北

  「極北で」  ジョージーナ・ハーディング(1955年生/イギリス人女性)

  2009年2月25日 単行本 新潮社より初版 ¥1,900

  原題:Solitute of Thomas Cave(トーマス・ケイブの孤独)

 およそ400年前、1616年の北極海で「たった独り越冬してみせる」と言い出した男が主人公であり、上記原題のトーマス・ケイブがその男。船長をはじめ、船員の誰も、ケイブが越冬後も生きているとは思わなかった。

 作者は大昔の航海日誌に取り組んで、あげく独りの男の生涯を通じ、「人間とは?」というドラマに肉迫している。

 帯広告の裏面に「開けない夜、荒れ狂う吹雪、愛した女の幻影。底知れない悲しみを抱えた男の極北での越冬と魂の救済」と書かれているが、男が極北の地で思い描いたり、考えたり、感じたり、思い出したりするあれこれが必ずしも時系列通りではなく、書き手(語り手)も必ずしも同一人でない印象が強く、そのためうっかりしていると前後の繋がりが理解の埒外にいってしまったり、納得が胸の底に落ちてこなかったりするが、そこに女性作家らしい思考、思念、決断が窺われる。

 男の生き様と人生とが北欧の空と海を背景にきわめて個性的に表現され、読者は感動へと導かれる。その表現はイギリス人とは思えぬほどデリケートで、ナイーブ。

 

 


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