正倉院宝物の世界/杉本一樹著

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書評:ためいき色のブックレビュー-正倉院

  「正倉院宝物の世界・日本史リブレット74」 杉本一樹(1957年生/宮内庁正倉院事務所長)

  2010年6月25日 山川出版社より単行本として初版 ¥800+税

 正倉院は八世紀、奈良時代の天平年間を中心とする各種宝物の蔵であり、中国から鑑真が来日した時期にも符号している。 

 一般に正倉院の宝物は美術、工芸品の集積だと思われがちだが、作者は「正倉院には膨大な文字資料の宝庫としての価値があり、本書でそのことを説明したい」と、本書へ取り組んだ動機を語っている。

 正倉院には蘭奢待(らんじゃたい)という名の名香があり、時代が下がって(16世紀)、織田信長が正倉院を開けさせ、その香の一部を削り採ったことで有名になったが、本書にはお香のことは全く触れられていない。

 彫刻、画(屏風絵)、楽器、香炉、経典、衣類(布製品、絹織物)、武具、木工品、漆器、玉石、ガラス製品、陶器などなど、種別に分け、写真を掲載しつつ、解説を加えている。それにしても、当時の日本が中国、朝鮮半島、遠くはインドを含め、多大な影響を受けていたことが理解される。

 なかに戸籍台帳が存在し、これを基本として税制が確立していたこと、身元調査にも戸籍台帳が利用され、家系が調査できる仕組みがあったことには驚愕とともに学ぶことができた。


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