深い河/遠藤周作著

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深い河
「深い河」 遠藤周作著  講談社文庫

 
 同感だったこと:

 日本人は明晰で論理的な哲学に違和感をもつ。世の中の割り切れない部分を無視せず、そういうものの存在を受容し、むしろ尊重する。だから、日本人の言動には曖昧さがつきまとい、西欧人には不可解に映る。

 それは一つの島国に長年生きてきた日本人だからこその心理であり、互いに共有している。

 「いわずもがな」とか、「以心伝心」などは、そうした心理の存在を裏付ける言葉だろう。

 ただ、その事実にはメリットもデメリットもある。問題は日本が日本らしい国土と風土に育った事実、他国との比較を絶した特殊性を外国に説明できるかどうか。自己主張できるかどうか。

 「よく見れば、なずな花咲く垣根かな」という俳句があるが、西欧人にはこの真意が永遠に理解できないだろうと、作者はいう。 「なずな」とは別名「ぺんぺん草」で、どうでもよい草に過ぎないが、そういう草花へも心をこめた凝視を送る、それが日本人。

 この作者には日本人に固有の情緒、もののあわれがあって、その心根が作品を通じて如実に伝わってくる。と同時に、西欧人の好きな合理性に同調することの弊害をも示唆する一書。とはいえ、日本人が平均的にもつ、そうした心根を西欧人に理解させ、日本的情緒の世界に同調させることは至難の業というしかない。


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