深海の大河/エリック・ローラン著

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「深海の大河」 セス・コルトン・シリーズ
エリック・ローラン(フランス人)著   長島良三訳
2003年フランスで刊行
小学館文庫  2007年2月文庫化初版

 

 内容はミステリーというよりサスペンス。

 アメリカ映画の「スパイダーマン」や「マトリックス」ほど荒唐無稽ではないが、舞台が海底9,000メートルという、大気圧に比べ90倍の圧がかかる世界に関する説明にしても、対応方法にしても、精確さ、緻密さが欠けていて、この種の仕事を多少でも知っている人にとってはそのあたりにシラけたものを感じさせてしまうのが欠点といえば欠点。

 とはいえ、本書では悪の側に立たされるボスが国連加盟国の代表者に対してビデオで発言する内容には、耳を傾けるべき今日的で深刻な問題がある。

 産業革命以来、人類は科学を軸に諸分野にわたって進歩、発展を遂げてきたが、そのことで陸上では産業廃棄物が生じ、森林伐採が進み、砂漠化が拡大し、海では乱獲が生じたばかりか、多くの燃えないゴミが釣り針や鉛の錘とともに海中廃棄され、他の生態系に影響を与え続け、多くの種がこれまでに絶滅しつつある。さらに、そうした過程に並行して人口がこの半生紀にほぼ2倍に増大した。

 人口の増はいずれ人類に食料と飲料の危機をもたらすであろう。人口の増大そのものが自然環境の破壊に直結しているからだ。

 筋書きは別にして、ボスの発言は的を得ていると私は思う。中国が15億に、インドが13億に達しようとしているだけでも多くの問題が提起されるなか、ユニセフや宗教団体がアフリカの難民を救おうと多くの寄付行為をしている。今後、アフリカで人口爆発が起こったら、地球はいったいどういうことになるのだろうか。わたしたちの子供や孫の時代を考えざるを得なくなるという点で、本書はありきたりのサスペンスの域を超えている。人口爆発が食料と飲料の危機を招来することは目に見えているからだ。

 また、解説で「これからのヒーローはコンピューター・システムの優れたハッカーでなければならない」というニュアンスの言葉には感銘を受けた。

 私見だが、中国が潜在的にもつ産業廃棄物が黄河や揚子江に廃棄され、これが河を下って海に達すれば、東シナ海はもとより日本海も汚染対象海域にならざるを得ないだろう。越前クラゲなどはその一例にすぎない。また、中国西地域から偏西風によって飛ばされる黄砂の量は年々増え続け、北京市内ではすでに10センチを越す堆積状態だという。その影響は日本にもきているが、韓国にもきているし、私の車もかぶっている。これを放置されたのでは、中国以東の国はたまらない。


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