温度から見た宇宙、物質、生命/ジノ・セグレ著

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温度

  「温度から見た宇宙、物質、生命」  ジノ・セグレ(アメリカ人)

   副題:ビッグバンから絶対零度の世界まで

   訳者:桜井邦明

   講談社ブルーバックス  2004年10月初版

 著者はペンシルベニア大学、天体物理学者だが、本書がカバーする分野が広すぎること、単なるヒントを提供した学者の論文や、真実を衝いてはいるが中途半端な論文などを年代によって詳細に書きすぎているため、一体何が最終的な真実なのか、読者を混乱させ、当惑させるきらいが否めない。

 そうした内容から、真実と思われる部分を抜書きすると:

1.体温調節の機能はすべての生物種に共通。種相互がどの程度に異なり、どの程度に共通なのか、最近になってようやく解り始めたが、互いの類似性、多様化についての研究があわせて今後の課題。

2.時間や度量衡は古代から測定する知恵が発達してきたが、温度についての測定記録は長いあいだ文明国ですらなかった。だが、初期宇宙論では事象の進展を記録するのに、時間よりむしろ温度が用いられる。

3.人類はおよそ500万年前にチンパンジーから分岐、アウストラロビテクス・アナメンシスから、同アファレンシス、次いで同アフリカヌスと辿った時点で、背丈は約120センチ、体重30キロ足らず、脳は現在の人間の3分の1、骨盤は手を地につけて動くよりも直立して歩けるような形になっていた。その後、250万年前に再び分岐が起こり、初期の類人猿は絶滅、一種だけが生き延び、進化して繁栄、ホモ・バビリスから、ホモ・エレクトスへ、そしてついにホモ・サピエンスへと変異した。

4.ホモ・サピエンスは少なくとも、20万年前には木で火を燃やした証拠がある。彼らは果実食から肉食、そして死肉の採取から狩猟へという変化を起こし、滋養に満ちた動物性蛋白質を摂取することで体を大きくした。(日本人が小さい理由は肉食経験の時間的な差によるという)

5.5万年前には、動物を捕獲するための道具、槍、弓矢などの武器が南東ヨーロッパと中東に出現し、大躍進の時代に入る。

6.石器時代、青銅器時代を経て鉄器時代に入ると、文明は飛躍的に発展、使われる火の温度は1000度Cから1400度Cに達し、この温度レベルは2000年前半まで続く。

7.17世紀初めには温度計をはじめ、望遠鏡、顕微鏡、振り子時計など、続々と発明された。イタリアのサントリョが最初の温度計の製作者。

8.絶対温度でマイナス273度Cは正しい値だが、これを発見したのはシャルル、ドルトン、ゲイ=リマサックの三人の研究によるものだが、当時、だれ一人として、この数値に関心を払わなかった。

9.新しい発見や考え方が出るたびに、科学は劇的な変化をくりかえしてきた。その新しい考え方の一つとして、地球は昔から多くの温暖期や氷河期を経験してきたという考え方を生んだ。

10.ケプラーは惑星の軌道が円ではなく楕円であることを明らかにした。ニュートンによれば、地球は球形ではなく、赤道部分がややふくらみ、南北が少し狭隘になっていて、その対比は231対230であると発表したが、この数値は今日の測定結果と驚くほど近似している。

11.氷河時代についての推論には、歳差(2万2千年)、離心率(10万年)、自転軸の傾き(4万1千年)の三つの異なる期間が考慮されるようになった。

 以上のあたりまでは、なんとか内容を理解しつつ読んできたが、このあたり以降から神学者による余計な論文が紹介されたり、余計な説明が冗舌に語られはじめ、読み進めることに次第に苦痛を伴うようになり、読書の継続に嫌気がさした。

 講談社のブルーバックスには魅力的なタイトルの書物が多いけれども、内容を予めチェックした上で入手すべきこと、内容自体の難易度は別にして、何をどのように説明しているのかをよくよく吟味すべきことを、本書から学んだといったら皮肉な感想になるだろうか。少なくとも、作者の単なる自己満足で広大な分野を、まるで散策するように渉猟する書物は敬遠すべきことを肝に銘じた。


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