無知との遭遇/落合信彦著

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無知との遭遇

「無知との遭遇」 落合信彦(1942年生/国際ジャーナリスト)著
小学館より2010年10月6日初版  新書 ¥720+税

 

 「今の日本では、政治家という職業がいちばん楽」という言葉に続いて、「目を覆いたくなるような質の低いタレントや有名人が議員になるのを防ぐために、立候補する前に資格試験を行なうべきだ」とあり、あとは一気に読まされてしまった。

 さらに、「小沢一郎の家には億単位のタンス預金があるのに、泥棒が入らないのは、泥棒と小沢とは同業者だから」というジョークは秀逸。

 小沢が手にした賄賂と鳩山が父親から相続した賄賂は東北・関東大地震への見舞金の一部として処分したらいいし、さらに国会議員の数を半分にし、議員の年俸も半分減らすべきで、そこから得られる金額も義捐金に使ったらいいのでは。

 以下は目に止まったところ。(   )内は私の個人的な意見。

 *政治資金スキャンダルにみまわれてなお政治の表舞台に出ていられるという日本政界の感覚は異常ではあるが、程度の低い政治家を選んだ有権者の側にも問題はある。

 (民主主義社会が多数決によって成立する以上、選ばれる人間のレベルが低くなるのは当然。多数決主義が孕(はら)む問題であり、視聴率至上主義のTV番組が幼稚で拙いのも同列にある)

 *英語もしゃべれないような人間を首相にするな。

 (英語の得意な作者の一貫した立場が窺えるが、アメリカへの留学経験のある鳩山がマニフェストに記した『沖縄の米軍基地を県外へ』というマニフェストに逆らって、オバマに『Trust me』などと言ってのける神経が解らない。英語をしゃべれるかどうかではなく、本人の政治家としての質、外交に関する判断力の有無、物事の本質をわきまえる認知能力などに問題があるのでは? むしろ中途半端に英語がしゃべれる政治家のほうがよけいなことを口にする可能性があり、危険を孕むのではないか。鳩山はアメリカの大学に留学時代、オバマとは同期だったと聞く。)

 *日本の政治家は収入が多すぎる。Free of chargeのものを含めると、一人の年収が1億円になる。衆議院を監視する義務をもつ参議院がその義務を果たしていない。

 (参議院は不要ではないか。仕分けされるべきは参議院。少なくとも、議員の数は現状の半分で充分)。

 *パラサイトとかニートとかカタカナ言葉をつけるから、意味合いに曖昧さがあって、本筋から外れてしまう。『ごくつぶし』とか、『居候』とか呼んだほうが本人に響く。

 *育児放棄、過保護、両方に共通しているのは自己中心的な姿勢。こういう母親は無知で無恥。

 *無恥と無知はマスコミの世界にもあり、時代の真実を切り取っていくはずの業界が最も閉鎖的で遅れている。

 (こういう業界に情報の発信を全面的に依存している日本人はどうなる?)

 作者が本書で訴えたい主旨は以下の文に集約されている。

 「政治家の無知がこの国を経済危機の真っ只中に放置し、文化的な無知がこの国の内向き志向と閉鎖性を強める。若者の無知は国を変革していく新たなエネルギーを生み出さないし、マスコミの無知や情報の重要性への無知が国民の知性や安全を危機に晒(さら)している」

 内容はきわめてまともな、ときに痛快な話に溢れているものの、自身がアメリカで過ごした時間が長く、英語はアメリカ人並みにしゃべれることが自慢らしいこと、さらにはアメリカ人的ユーモアのしつくどさを本書全体にちりばめている点からは、作者の自己顕示欲の強さが窺えて鼻につく。


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