熊・人類との共存の歴史/ベルント・ブルナー著

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書評:ためいき色のブックレビュー-熊

「熊・人類との共存の歴史」 ベルント・ブルンナー(1964年生/ドイツ人)

  訳者:伊達淳

  2010年8月20日 白水社より初版 単行本 ¥2、400

 帯広告に「有史以来、熊と人とは、他の動物とは異なる特別な関係を結んできた。世界各地の神話、宗教、伝承、文学、科学などにおいて、熊はどのように描かれ、語られ、解釈されてきたのか」と書かれているが、そう言われてみても、熊という動物とだけ、他の動物とは異なる関係が人間とのあいだに存在するようには思えない。

 わが国でも山中で熊に出逢ってしまい、襲われて怪我をしたり死に至ったりというニュースがときおりあるし、最近のTV放映でも1915年に開拓時代の北海道で7人が羆(ひぐま)に殺害された史実をドラマ仕立てにしていた。昨夜は昨夜で、イヌイットが住む屋外にホッキョクグマが曝されている図もTVで紹介されていた。(イヌイットにとっては熊に限らずあらゆる動物は食料)。

 ドウクツグマ、グリズリー、ヒマラヤグマ、パンダ、羆、クロクマ、ペルシャグマ、マレーグマ、ナマケグマなどなどが本書に出てくるが、舞台となる地域は世界中に及んでいる。

 なかから、これはと思った箇所を若干挙げてみる:

*英語の「Grisly」は「恐ろしい」という意味。

 (映像で見る限り最大にして最も怖い熊はグリズリーという印象がある)

*原始的な武器しか持たない昔の人間に対して熊は手ごわい相手だったが、人類は熊のテリトリーを少しずつ侵略し、畑として活用するために森林を伐採し、相手を追い出した。(このときから、人類と熊との接触の機会は増えたのは事実だが、同じことは猿にも、鹿にも、キツネなどの動物にも言える)

*熊が生息した土地にはほとんど必ず熊と人間との関係に色々な伝説が残っている。

*ロシアやリトアニアではかつて王家の屋敷の護衛として熊を使ったケースがある。

*シベリアのカムチャツカ半島に生息するクロクマは世界で最も気性の穏やかな熊。

*昔、アイヌの女性には子熊に乳を与えるケースがあった。

*ペルシャの熊はヨーロッパの熊より小さく、容易に飼いならすことができた。

*インド中部のマディア県では1989年から1994年までの5年間にナマケグマと遭遇した48人が命を落とした。

*北米では1900-1980の80年間に41人が熊に殺された。生息数はグリズリーが6万頭、クロクマが90万頭。

*2006年、グリズリーと北極熊との間に子が生まれていたのが発見された。

*イギリス諸島では紀元前1千年には野生の熊がいなくなっていた。その後、ドイツやスイスでも500-600年という長い年月をかけて熊は消えていった。

*シベリア東部のクラスノカルスクに住んでいた男性は生涯に138頭の熊を殺して表彰された。うち2頭は素手で殺した。

*カリフォルニアではかつて熊と雄牛、熊と犬などとの戦いを見世物としてやった歴史がある。

 本書は人間の熊とのかかわりはもちろん、土地により種類によって違いのあるかかわりと、双方の間に横たわる距離というものを感じさせべく書かれている感はするが、熊と人間にだけ特別なかかわりがあるようには最後まで思えなかった。

 あまりに真面目に書きすぎているため、しばしば眠気を催したことも事実。


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