狩猟サバイバル/服部文祥著

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「狩猟サバイバル」  服部文祥(クライマー・登山家)著
帯広告:狩猟登山はじめました。撃って、食って、登る
2009年11月13日 みすず書房 単行本初版 ¥2400+税

 

 以前、同作者の「サバイバル登山家」を読んで、いたく感激した記憶があり、同じ作者の次の作品を心待ちにしていた。作者の名前の入った上記著作を見ただけで、字義通り、飛びついた。

 ところが、いきなりこの作者とは縁のないと思われていた文明の利器、それも猟銃を使った「サバイバル登山」という、自然との対処のあり方自体を大きく変更することが告げられ、唖然とした。

 おそらく、出版社から「サバイバル登山に新機軸を」との依頼があり、それに応えて「猟銃による動物の殺害と、その肉を喰らっての山行き」という体裁をつくろってイメージチェンジを測ったのだと思われるが、一般に「我々が日常口にする肉類は誰かが隔離された場所で屠殺した動物の肉である」点を強調することにより、唐突ともいえる「猟銃をもってのサバイバル」を先鋭化させまいとする配慮が垣間見え、不快感が強い。「普段、あなたが口にしているのは生物の死体ですよ。きれいごとではないんですから」と、前作で強調したことを再び持ち出すのはどうかと思う。

 この作者が文明の利器、それもよりによって銃を使うとあっては、この作者の他との比較を絶したサバイバルのあり方にケチがつくのではないか。また、そういう形でしか新機軸が得られないとすれば、このシリーズの将来性は「際物」のまま終焉を迎える可能性が強い。

 猟銃を使うという話なら、別途プロのマタギを書いた著作もあり、そのほうがはるかに迫力もあり、マタギの生活に徹しているだけに相手の動物との間合いのとりかたにしても、解体にしても、読む者の想像力に直接訴えるものがあって、銃についてはもろの初心者である著者が猟銃や解体についてあれこれ説明する話はまどろっこしいばかりで、ページ稼ぎにしか感じられない。

 要するに、前作に比べ、野性味も緊張感も損なわれ、サバイバルという言葉が宙に浮いてしまっている。山の中で孤軍奮闘する作者のイメージからは遠く、ページを稼ぐだけのだらけた文章が並ぶばかり、本書の半分を過ぎたあたりまで我慢して読んだものの、結局はギブアップした。

 折角の作品にケチをつけることになったかも知れないが、ノンフィクションを著す作家が少なくなった現状下、期待が大きかったぶん、感想としては辛辣になってしまったことを了解願いたい。


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