独女世界放浪記/南まい著

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独女世界放浪記

「独女世界放浪記(ひとりおんなせかいほうろうき)
著者: 南まい(1982年生) 画:倉田真由美
副題:世界一周だいたい50か国、510日
帯広告:セクハラにも、スリにも、土砂災害にも遇いました
2010年7月14日 ポプラ社より単行本初版 ¥1400+税

 

 文章には拙(つたな)さもあるし、若い女性特有の今時言葉も多発するけれども、にも拘わらず一気に読めるほどの円滑さとともに、スピード感にも迫力にも満ち、ハラハラドキドキの連続、旅を職業としていた読者としても正直圧倒された。

 女の子一人の500日を超える長期の旅、しかも50に及ぶ訪問国には途上国が多く、著者は旅の前からこの旅行に危険がつきまとうこと、盗難にもレイプにも遭遇の可能性のあることを覚悟していたらしい。そのために、事前にブラの左右に100ドルずつ隠しこんで、荷物を盗られた場合の防衛策を講じているし、強姦された場合を想定して今度夢(コンドーム)というお守りまで用意している。「せめて、これを使って」という意味らしい。

 「行かずに、見ずに後悔するより、行って後悔するほうがずっとまし」との思いから、いきなりブラジルに飛んだのだが、リオジャネイロまでの飛行機で一緒になったブルジル人のおばさんから思いがけないアドバイスが与えられた。

 「ブラジルはすごく危ない国よ。一人旅なら、カバンを持ち歩いちゃダメ、英語を話すとお金もってると思われるし、写真も撮っちゃダメ、できるだけ一人で歩かないで、とくに路地は。カッパライもスリも強姦魔もいるから。現地人のわたしだってキャッシュは靴に入れたり、胸元に隠したりするのよ」と。

 訪れた50か国のうち、本書に登場する国は印象深かった国、エピソードや事件のあった国に限られるが、目次になっている国はブラジル以下、次の通り。

 ボリビア、ペルー、メキシコ、グァテマラ、ニューヨーク、モロッコ、エジプト、ハンガリー、トルコ、シリア、イエメン、エチオピア、ケニア、インド、ネパール、シンガポール、ミャンマー、ラオス、マカオ、台湾。

 モロッコでは1日前に民間人の家(泊めてもらった)で飲んだ水にやられ、ひどい下痢、腹痛に見舞われ、到着したホテルは安宿で冷房もなく、トイレは断水して排泄物が流れないという状況に置かれるが、作者はそれでも懲りずに倹約できる道を徹底して選び、民間人が「泊めてくれる」といえば、迷わずに泊まってしまい、家人が提供してくれる飲料水、食事を平気で口にする。モロッコでの腹痛のほかは、下痢の話が出てこないところから察すると、著者はそうとうに胃腸が丈夫にできているらしい。

 モロッコではベルベル人に「ベルベルマッサージをしてやる」とサービス提供されたのはいいが、夜間に砂漠に出、そこに横たわるよう促され、満天の星を眺めていると、男の手が腹部から脚部へ、脚部から股の付け根へと動いて、エロマッサージであることに気づいたり、男どもによるボディタッチはほとんど連日で、なかには露出狂がいたり、エジプトの海ではシュノーケルダイビングを一緒した案内人の男に胸を鷲づかみにされたり、後方から羽交い絞めされ、あげく強引にキスされたりと、「よくまぁ、そういうところに行くよ」という話が続く。

 さらに、シリアではホテルのオーナー自身がセクハラ大好き男で、部屋とは別の場所になっているトイレとシャワールームに行きたくても、オーナーが覗きをするつもりで外で待ち構えていることが判るから部屋から出られず、シャワーはあきらめ、尿はビニールを利用、洗面台に流してしまう。

 概して、女性が頭髪や皮膚を黒い布で覆うイスラム圏では、男たちが作者のように身体のシルエットを露わにし、肌の一部を剥き出しにしている女性を目にすると欲情するらしいが、同じイスラム圏でもイエメンだけはセクハラに全く遇わなかったという。(イエメンはアルカイダを送り出す国といわれるが、人も国も一面からだけ見るものではないことを教えている)。

 インドではフロントマンの「世界遺産に行きたいのならバイクで送ってやるよ」との親切な言葉に嬉しくなって、バイクに乗せてもらうと、走り出すや否や、「あんたはセックスが好きか?おれは大好きだ」と大声で言う。「日本人は自分の好きな特定の相手としかセックスはしない」と応じても、「セックスほど気持ちのいいものはない。インドじゃ、女だって大好きだ」と言い張る。世界遺産の前に到着すると、「あとで部屋に行く」と言い放ってホテルに戻っていった。

 作者はホテルに戻ったとき、フロントに男がいないことを確かめつつ部屋に入ったが、しばらくすると、ドアがどんどんと叩かれ、「おれだ、おれだよ、入れてくれ」という怒鳴り声。部屋の電気をぜんぶ消し、音をたてずに黙っていたが、10分おきに戻ってきてはドアを叩くという行為が一時間も続いた。ようやくあきらめてくれたと思い、シャワールームの電気をつけて入ろうとしたとき、小窓に男の白目。

 途上国は基本的に物価は安く、食料はもちろんのこと、宿もその気になれば安い宿を探すことが可能だが、この旅を通じてすべてにわたり破格に安かったのはインドで、同国北西部の砂漠の街、クーリーという村では1泊3食つきで¥200という超安値だったという。

 インドの列車の混雑ぶりは、日本のTVでもときおり放映されるが、作者は乗車率500%というインド人の身体でもみくちゃにされる列車に座席指定せずに二度も乗り、うち一度は定刻通りに動いてくれて20時間という列車で、大量のインド人男性にお尻を触られ、痴漢された。

 しかも、その夜に泊まった安宿にはモスキート(蚊)の500匹以上が壁に張りついていて、ベッドに入ると、ぶんぶん飛ぶ音が眠りを妨げ、朝起きて鏡を見たら、顔は刺されまくってお岩さんさながらだったという。

 さんざんな目に遭った話ばかりが私の記憶に残ったが、作者が最後に、「日本のパスポートの威力を実感した。欧州人でさえビザを要するという国でも日本人ならビザ不要という国が多く、たとえビザを要するという場合でも日本人はビザ代が安い。世界で日本人ほど旅に恵まれた国民はいないということであり、日本に生まれたことが宝くじに当たったぐらいの幸運であることを認識した」との言葉を残しているが、それはその通りで、いい得ている。

 (日本国内はもとより海外においても、日本人による犯罪が他国の人間に比べて僅かであることや、買い物その他で落とす金額が平均を上回っている点が評価対象になっているはず)。

 中国にだって、日本人ならビザなしで入国できるが、中国人が日本に来ようとすれば、ある程度の年俸がないとビザそのものが発給されない。インドネシア人も日本に来ようと思ったら、インドネシア在の日本大使館か領事館でビザを発給してもらわなければならないし、ほとんどの場合は日本人か日本企業に入国後の経済的な保証をしてもらうことが前提になっているのに、日本人がバリ島を含めインドネシアに入国するのにビザは不要。

 本書には妙に説教ぶった言葉がなく、ハラハラしながらも、最後まであっという間に読みきれる。ただし、こういう女性が自分の娘だったり恋人だったりするのはご免こうむりたいし、同じような旅行を他の若い女性に勧めたいとは思わない。


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2 Responses to “独女世界放浪記/南まい著”

  1. withyuko より:

     著者は、いろいろなキケンを踏まえたうえで、それでも行かずに後悔するより、、、って決心して、勇気ある女性ですね。潔さを感じます!誰にでも一度しかない人生なので後悔がないように行きたいところへは行くべきですよね。
     まさに貴重な体験ですよね。私もこの本読みたくなりました!
     hustlerさん、若い女の子の書いた本もお読みになるんですね~。ジャンルにも著者にもこだわらない、偏らない読書って素敵ですね。心が広くないと出来ないと思います。

  2. hustler より:

    ホントに面白い本です。ぜひwithyukoさんも読んでみてください。

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