猫の目散歩/浅生ハルミン著

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「猫の目散歩」 浅生ハルミン著
2010年3月19日 筑摩書房より単行本初版 ¥1400+税

 

 帯広告の裏表紙に、「私は私の中の猫と一緒に出かけることにした。猫はどんな場所にも出掛けてゆくが、動物ばなれした態度でもって、仙人のように達観したことを言う。猫がパトロールするみたいに、ぬき足さし足、ぐるっとまわって見てきたことを、報告したいと思います」との著者自身の言葉があるが、著者本人と猫の目線とが微妙なバランスを保ちつつ東京や横浜の有名箇所を案内してくれる内容はときに面白く、ときに懐かしく、知らぬ間に癒されている自分に気づく。

 私自身はもし一緒に住むのなら猫よりも犬のほうが好きなタイプだが、1か月に1度お世話になっているクリニックの周辺は猫だらけで、いつもその日は車から降りずに、じっと猫たちの動きを観察する癖がついてしまっている。「猫は自由だな」と、その都度思うが、かれらの挙動からは「そんなことはないんだ。猫の社会にもけっこう気を使う猫関係があるんだぜ」と言い返されている気もしなくはない。

 横浜の外人墓地、中華街、山下公園、都内の吉原、小石川後楽園、六義園、浜離宮、日本橋、清澄公園などなど、私にはどこにも懐かしい関係が過去にあり、むかしのことが走馬灯さながらに脳裏を巡った。

 著者の文体には一定の年代以上の言葉と、若年層の言葉とが錯綜しているものの、それはそれでことさらの違和感もなく、読書の継続をさまたげることはない。


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