生きた地球をめぐる/土屋愛寿著

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「生きた地球をめぐる」  土屋愛寿(1934年生)著
2009年11月27日 岩波ジュニア新書より初版 ¥840+税

 

 裏表紙にはこうある。

 「世界秘境、ギアナ高地の神の山に登り、2枚のプレートがわき出てくる割れ目ギャオを歩き、大陸を引き裂くアフリカ大地溝帯の壁を下った。活動する地球は表面に多彩な地形を刻み、私たちに生きた姿を見せてくれる。地球のすみずみを訪ね、現場を目の前にして、ダイナミックな活動の歴史と地形をうみだすメカニズムがわかる本」

 「地学」というものがあることは知っていたが、「地史学」という学問には初めて遭遇した。地球上に存在する地形の形成を論ずる学問で、研究対象となるのは日本なら山口県の秋吉台地のように世界的に珍しい、希少性の高い地形。ちなみに、上記の表紙写真はアフリカ大地溝帯の南端にあるオルドイニョ・レンガイ火山。

 作者は教師の仕事から退いた後、奇形を誇る地を1千箇所みずからの足を使って訪問し、それぞれの歴史的な生い立ちを説明してみせる。

 例を挙げれば:

*ギアナ高地(TVでしばしば目にする)はブラジル、ベネズエラ、ガイアナの三国にまたがり、ここに生育する植物は4千種あるが、うち75%が固有種。

*アイスランドは大西洋海底山脈の中央海嶺が陸上に顔を出した島で、海底だった土地が剥きだしになっているだけでなく、全島に火山がひしめいている。スエローストーンの間欠泉は80メートルの高さに5分間吹き上がり、1度で3万リットルの熱水を放出する。

*パキスタン北部にギルギットと呼ばれる土地があり、そこの近くにユーラシアとインド亜大陸プレートが衝突した現場が存在する。双方の岩壁の色が違っているのは、それぞれの岩壁が長時間を要しつつ移動してきた歴史の違いを表現している。

*プレート移動の途中で上昇するホットスポット、そこでの火山活動が活発なのがアフリカ西岸沖のセントヘレナ島(ナポレオンが流された島)をはじめ、太平洋のハワイ諸島や南米のエクアドル領のガラパゴス諸島。

*イースター島もかつては火山島だった。

*トルコのカッパドキアは火山噴火による凝灰石の堆積がくりかえされてできたところ。

*カリブ海のフランス領、マルティニク島にモンプレートという火山があり、1902年に大噴火。噴火は毎日のように続き、斜面の大爆発のあと火砕流が下り、熱風が秒速50メートルで一気に麓(ふもと)を襲った結果、住民、避難民あわせて約3万人が焼死、または窒息死した。

*世界最大のフィヨルドはノルウェーのオスロから400キロ北にあり、名を「トロンへイム・フィヨルド」という。

*スイスのアレッケ氷河は世界で最も美しく整った氷河。

*オーストラリアは地史の宝庫(1)ピナクルズは西岸パースの北200キロの海岸にあり、奇怪な石柱が無数に乱立。(2)エアーズ・ロックは世界最大の一枚岩、地上に見える部分は全体の10分の1。

 などなどだが、上記は本書で紹介され説明される奇形地のほんの一部、ほとんどが写真によって補完され、理解を援けてくれる。

 作者はどこに足を運んでも、現場から石(カンラン石、玄武岩、黒曜石、凝灰石、安山岩、水晶など)をピックアップして持ち帰っているが、それが羨ましく思われた。

 「のだ」止めの文章が多いことは、読者にジュニアを想定したための意図的な作文かとは思うが、辟易感が強い。とはいえ、地上に残された奇妙な地形はプレートの移動や火山活動にリンクしていることを学ぶことができただけでなく、それぞれの写真には目が釘付けになった。


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