生命は宇宙のどこで生まれたのか/福江翼著

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書評:ためいき色のブックレビュー-生命

 「生命は宇宙のどこで生まれたのか」

 著者:福江翼1979年生/国立天文台ハワイ観測所研究員)

 帯広告:宇宙生物学の最前線がわかる

      生命はなぜ左手型アミノ酸だけでできているのか

 出版:祥伝社より2011年2月10日初版(新書) ¥780+税

 本書については、学んだことの一部を以下に記すにとどめる。

*宇宙空間には地球外に生命が宿る環境があり得る。これを追究するのが「宇宙生物学」、英語でAstrobiology(アストロバイオロジー)という新しい学問。

*これまで太陽系以外に500個以上の惑星の存在をつきとめた。年齢の異なる惑星を調べることで、生命誕生が育っていくプロセスの観測が可能になった。

*自然には350種余のアミノ酸があるが、人体の蛋白質は10万種もあるにも拘わらず、アミノ酸は20種しかない。これは、おそらく地球上の生命の誕生と進化にかかわっているから。

 さらに、生命を構成するアミノ酸は水素、炭素、窒素、酸素という4種の元素が複数組み合わさった物質。アミノ酸の鏡像異性体(鏡に左手を映せば右手に見え、右手を移せば左手に見える現象)から連想されるように、左手型と右手型のアミノ酸があり、いずれの性質も互いにほとんど同じだが、地球上の生命はなぜかすべて左手型アミノ酸を使用している。

*アミノ酸を人工的につくると、左手型と右手型が等量できてしまう。これをいずれかに偏らせることが可能でなくては、現在の地球上の生命体の起源が説明できない。

 偏らせる効果は「円偏光」と呼ばれる特殊な光。

*1500万度という高温、高密度のなかで、核融合反応がはじまり、恒星が誕生する。恒星の周囲には円盤状に塵やガスが集まるが、これが惑星、小惑星、彗星、隕石などを生みだす。そして、惑星上で生命が生まれれば、この円盤に含まれている物質こそが生命を構成する材料となる。

*地球が誕生して6億年後、隕石の落下が激しくなり、この時期にアミノ酸、あるいはアミノ酸の前駆体が地球に持ち込まれ、左手型アミノ酸を用いる生命が生まれたと考えることができる。隕石中のアミノ酸も左手型に偏っていたことが証明されている。隕石に残された物質から過去に地球の近くで超新星爆発が起こったことが判っている。

*地球も原始の惑星が衝突、合体をくりかえしながら46億年前に誕生した。この時期に地球に落下した物質に生命誕生の礎があった。

*あらゆる生命はそれぞれゲノムと呼ばれる遺伝情報に依拠し、それぞれの設計図に従って生命活動が維持されている。生命の進化はゲノムの変容でもあるが、変容の痕跡が残されている。

*地球上の生命は細胞の構成や数に相違はあるが、例外なく細胞という小さな塊から成っている。ちなみに、人間の体はおよそ60兆個の細胞でできている。

*第二の地球を太陽系以外に発見するためには特殊望遠鏡による観測が必須。ハワイにある「すばる望遠鏡」は鏡のレンズの直径が8メートルなのを30メートルにしてパワーアップする計画があり、NASAでは「ハップル望遠鏡」の鏡レンズを6.5メートルにし、3倍にパワーアップする予定。

 以上、本書に一貫するのは真面目に真摯に「宇宙と生命」について説明していることで、「宇宙生物学」という新しい学問には多くの自然科学の分野が関わっていることも学ばせてもらった。

 就中、地球外生命を探す上で重要なのは宇宙における「生命タイプ」の多様性への配慮という点で、地球と同じタイプの生命体を想定する必要がないという指摘にはなるほどと思わされた。


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