生態系のふしぎ/児玉浩憲著

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seitaikeinohusigi

「生態系のふしぎ」
児玉浩憲(1934年生/科学ジャーナリスト)著
副題:失われた環境はどこまで再生できる?
   生態系でいちばん弱い立場の生き物は?
2009年11月24日 ソフトバンク・クリエイティブより新書初版 ¥952+税

 

 本書は動植物の生態系を地球という規模で、多角的なアングルから説明していて、読みごたえがある。

 「食物連鎖の一部が欠けると、最上位者が最大のダメージを受ける」との話は、現に今まさに最上位者である人類がみずからの母体を破壊し、みずから首を絞めていることを明言しているも同然。

 人間が人工的につくったもの、ビニール、プラスチック、発泡スチロールなどは自然のサイクルのなかに溶け込むことはできないが、動植物のすべては、排泄物であろうが、死体であろうが、そのままサイクルのなかに取り込まれ、自然そのものに寄与しこそすれ阻害することはない。

(人間が廃棄した発砲スチロールやプラスティック製品を飲み込んだ多くの野鳥や海の生物が死んでいる)。

 「森林は数億年前から太陽エネルギーを蓄積することで、大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を排出し、大気の組成を多くの動物が生息のための呼吸ができるようにしてきただけでなく、地下に水を貯蔵してきた。」

 日本の自然環境について:

1.元々、縄文時代、西日本は照葉樹林帯に覆われ、日本に住んでいた縄文人は中部以北に限られていた。紀元前5百年から1千年頃に中国から稲作文化が伝来、水田をつくるために、主に西日本の土地が切り開かれ、森の大半が伐採、弥生時代に移り、定着型の生活がスタート。定着地は川沿い、谷筋、平野の氾濫原を中心とし、いうまでもなく水田工作を目的とした。

2.稲作は西から東へと伝わっていったが、その過程で照葉樹林がみるみる減少。照葉樹林は伐採され、放置されると、西日本の場合、土壌の栄養分の違いからアカマツ林に変貌し、関東平野の場合はクヌギ、コナラの林に変貌した。

 江戸時代以降、関東ではクヌギ、コナラを中心とする人工林を意図してつくり、これを薪炭として活用。

3.現在、日本は70%近くが緑といわれるが、自然植生(オリジナルの植生)はそのうち北海道、東北その他の限られた場所に散在するだけで、全体の20%に過ぎず、80%はスギとヒノキである。これは、戦後、林野庁による用材として生育が速く価値の高い植生を意図的に造林した結果であり、副作用として杉花粉症をもたらした。

4.伝統的な農業を復活させ継続すれば、里山(さとやま)も復活し、水田には生物が生き、むかしの日本の田園風景がよみがえる。

「地球の扶養能力は人口が60億を超えたところで限界に達し、以後、世界中に飢餓、栄養不足が蔓延」。

「人口増に対応するために、畑を増やす。そのために焼畑を行なうから、大気中には二酸化炭素が増え、気候変動につながる。戦後の50年間で、世界の熱帯雨林のほぼ50%が失われた。こうした悪循環は人口が増加するかぎり、続くであろう」

「アフリカ北部を占めるサハラ砂漠も5千年前は草木の生い茂る緑地帯だった。人間が放牧や農業を始めてから荒れ始め、古代文明の形成とともに砂漠化が進んだ」

 (サハラ砂漠のエジプト領には紀元前1万年前後(あるいはもっと古い時代)に人類が居住した遺跡があり、洞窟の岩壁に大量の絵が描かれている)。

 上記したポイントは全体のほんの僅かな部分で、読後に記憶に残った箇所だけをピックアップした。学ぶことの多い、良書である。


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