生物多様性・入門/鷲谷いづみ著

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生物多様性入門

「生物多様性・入門」
鷲谷いづみ(1950年生・東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
帯広告:人類の幸福を支えるのは、生命豊かな地球
2010年6月9日 岩波書店(ブックレット785)初版 ¥600+税

 

 本書は僅か60ページの、いわば入門書でありながら、内容は濃度の高い識見に溢れている。

 なかから、これはと思った箇所を以下に記す:

*生物の多様性には40億年にわたる地球の生命史が凝縮されている。

 将来世代の必要(ニーズ)を損なうことなく、現世代のニーズを満たすことを保障する「持続可能性」という目標に照らしたときの今日の人間活動の危うさ。

(人類こそは地球に誕生した最悪の動物。破滅に向かってまっしぐら。おそらく、ほかのどの種よりも短命で終わるだろう)。

*生態循環:

 草木や藻類など光合成で有機物をつくりだす植物を「生産者」といい、植物を食べる昆虫や動物、それらを食べる肉食動物を「消費者」という。

 また、生産者や消費者の死体や排泄物などを分解して無機物にする細菌類を「分解者」という。

 こうした生物群集に加えて、光、温度、水、大気、土壌などの無機的な環境が一体となったシステムを「生態系」という。

*多様な野生植物からなる植生は多様な動物や微生物を宿すことができる。生態系を構成する種の多様性が増すにつれて多様性のありようは何倍にも増し、複雑な網目状の構造をとる。そのようなシステムである生態系の種類の多様性が「生態系の多様性」である。

*人為的な改変の少ない原生的な森林では高木層の樹木の多様性に加え中低木層や草本層にも多様な植物を含み、生物多様性が高い。それぞれの植物の根の深さが異なるため、根層を厚深に発達させ、保水力が高まる。さらには、何層にもわたる葉の層により太陽光も無駄なく利用される結果、森全体としての生産力が高く、保水のみならず、土壌浸食防止の機能も高い。

*現在では、地球規模でモノカルチャーが進み、農地の拡大が継続、森林、草原、湿原が消失し、これを抑止することが急務となっている。

*現在は六番目の絶滅時代:

 現代は、かつて多くの生物が出現したカンブリア紀以降の六億年における六度目の大絶滅時代の真っ只中にある。隕石の衝突など、自然現象を原因とした以前の大絶滅期とは異なり、我々が当面しているのは人間の活動や関与を原因とするもの。

 1年間に、およそ4万種の生物が絶滅しつつあると推測されているが、大雑把な推測しかできないのは人類が確認できている種が実際の生物種のほんの一部に過ぎないから。

*少数の侵略的外来種が世界中に分布を拡大、蔓延し、生態系を単純化させつつあると同時に、もともとそこに生息していた在来種の絶滅リスクを高めている。生息地の分断孤立化も個体群を絶滅に追いやる危険がある。

*1900年以降、地球全体の湿地面積の50%が失われた。湿地は地球温暖化防止に役立つ炭素の貯留や水の浄化などを含む多くの生態系サービスを提供する。

 日本では、2009年に「生物多様性基本法」が制定されたそうだが、最近の連日にわたった静岡県三島市の「猿に100人近くの人が咬まれた」というTV報道はいったい何なのか、あらためて首を捻った。


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