異邦人/アルバート・カミュ著

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異邦人

「異邦人」 アルバート・カミュ(1913-1960/フランス人)著
訳者:窪田啓作(1920年/パリ在住)
1940年初刊  1954年新潮社より文庫化初版 今日まで21回増冊

 

 学生時代から読んでみたかった小説だが、今日まで果たせずにいて、漸く入手、読了した。カミュはヤスパース、サルトル、ニーチェなどと並ぶ、当時、欧州を代表する哲学者。

 カミュは曽祖父が植民地であるアフリカの北、地中海に面したアルジェリアに入植していた関係で、アルジェリアで生まれ育ち、1940年にパリに移住、同時に処女作「異邦人」を著作、世に問うたところ、傑作との評価を受ける。

 主題は「人間とは何か」という根源的な問いかけに発した作品で、人間の不条理を衝いた小説だが、本書で個人的に感動したのは、刑務所を訪れる司祭を受け入れようとせず、無理に訪問してきた司祭を拒絶、罵倒する場面。時代はフランス革命が終わって、かなりの時間が経った頃のことだが、母親の葬儀に涙を流さぬことが死刑の対象になるという信じられぬ時代背景がフランスに存在したことには驚愕。この時代、無神論者であることを堂々と明言する姿勢には感ずるものがあった。

 文章は初めの数十ページはワンセンテンスがやけに短く、ぶつ切れ状態で、カミュの文が下手なのか、訳文が下手なのかは判断がつかないが、本書に憧憬心を持っていただけに、がっかりさせられたし、全体を読み終わった感想としても、できの良い小説という印象はなかった。同じ作者の「ペスト」「転落」などを続けて読んでみたいという意思も喪失した。

 私が期待したのは、学生時代に愛読したニーチェの「ツァラストラ」、あるいはトーマス・マンの「魔の山」、あるいはサルトルの「実存主義」レベルの深みだったけれども、考えてみると、学生時代に読んで感動した本を現在読んで必ずしも感動するとは限らないということ。小説としても、やはり学生時代に読んだアンドレ・ジイドの「にんじん」やモーパッサンの「脂肪の塊」を凌ぐ面白さはなかった。良書はやはり柔軟な感性にあふれた学生時代に読んでおくべきだし、そのほうが記憶にも残る。

 知己の子供が大学に通っているので、私は読了した本のなかからこれという本は、「学生時代に読むことが大切、その年齢だから感動もできる」と強調しつつ必ず謹呈しているが、過日聞いたところによると、彼女の部屋は図書館並みになっていて、友人たちがたくさん訪れ、借りていくが、容易に返ってこない由。若い人が読書に時間を充てている事実には喜ばしいものがある。


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One Response to “異邦人/アルバート・カミュ著”

  1. Karina より:

    カミュの場合は、純粋な小説というよりも、哲学小説っぽい感じですからね~。そんな私はカミュが大好きです。
    後半のあたりで神父さん(だったかな?でも宗教関係の人だったはず)からいろいろキリストについてあーでもない、こーでもないと言われて、「自分は死刑になるんだ」ともう自分の運命を受け入れている主人公の苛立ちの描写はすごいと思いましたけどね。あと、エッセー集「シーシュフォスの神話」とかも深いなと思いました。

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