白痴/坂口安吾著

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hakuti

「白痴」 坂口安吾(1906-1955)著
新潮文庫
1946年発表
1948年文庫化初版 (96刷目)

 

 同じ作者に「堕落論」「風博士」という作品もあるが、例によって受験勉強で作者名と作品とを記憶するよう強いられた作品にすぎず、私はこの作者の作品には一度も触れたことがない。

 書店で上記作品を目にし、一応「名作」として覚えたのだから、一度くらいはとの思いつきで入手した。

 内容は8編の短編で成っていて、背景としては戦中戦後が中心となっているようだが、文体が騒々しいばかりで、胸に迫るものはなく、「自分は落伍者であり、堕落者であり、異常人である」との自意識があるにも拘わらず、その部分をえぐって、全体の構成を推敲することもなく、仰々しさだけが全編を覆って、読むほどに虚しさばかりが脳裏に残った。

 それでも、第一編の「いずこへ」から、表題の「白痴」まではなんとか読み続けたものの、第三編「母の上京」に至っては、読み継ぐ気力が失せてしまい、こんなものを受験生に記憶を強制した教師や学校教育に、いまさらながに憤りを覚えただけで放り出してしまった。

 戦前に生まれた作家に共通するように感ずるのは、自己中心のエゴ、男尊女卑、やぶれかぶれの諦念、酒と女、遊びのための徘徊、芸術至上主義であり、例外はわずかという印象。

 「こんな本がよくまあ96刷目まできたな」というのが正直な感想で、今後とも同作者の作品を二度と手にしたいとは思わない。


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