真昼の花/角田光代著

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「真昼の花」  角田光代著
新潮文庫  2004年9月初版
2000年に単行本として新潮社より初出

 

 本書は「真昼の花」と「地上8階の海」の二編から成っている。

 「真昼の花」は東南アジアでのバックパッカー物語だが、地名をあえて記さずに物語を進めていく裏には、ツアーそのものよりも自分自身の内側を見つめる姿勢が窺える。無目的で、投げやりな、あるいは捨て鉢な気分は、西欧のバックパッカーにはむかしからあったが、日本のバックパッカーもそれに追いついてきた感がする。

 「地上8階の海」は良くいえば個性的だが、世捨て人的でもあり、概して虚無的で、社会を裏側、あるいははすかいから見る姿勢に徹していて、そういう生き方をどう評価するかで、作者への傾倒を強める読み手とそうでない読み手とに分かれるだろう。同じことは「真昼の花」にも言える。

 私個人の感想をいえば、読んでいて、気分が暗くなるばかりか、陰鬱にもなり、精神的な疲労を感ずる。残念ながら、この作者のほかの作品に触れてみたいという気分にはなれない。


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