「石油の呪縛」と人類/ソニア・シャー著

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「石油の呪縛と人類」 ソニア・シャー(アメリカ人)著
訳者: 岡崎玲子(1985年生)
集英社新書  2007年1月初版

 

 作者はボストン在住のジャーナリスト、帯広告に立花隆氏が「これほど多面的な情報がこれほど見事に一冊に詰めこまれた本は他にない」と賛辞を惜しまず推薦しているように、本書は学術書であり、かつ啓蒙書でもあって、石油に関する多岐にわたる問題点を、地球温暖化問題や新しいエネルギー問題を含め、ほとんど百パーセントを網羅している。また、期せずして、前に書評した「環境問題のウソ」への反論も含んでいる。

 以下は書評というより、エキスを列挙したもので、備忘録:

「石油の誕生」

1)石油を産出するにも拘わらず、貧しい国であり続けている国がある。インドネシア、ナイジェリア、コロンビアなどがその例だが、最初の石油は1859年に掘られ、1世紀も経たぬうちに、先進諸国の社会の隅々にまで、石油に依存する機械と関連製品が行き渡った。(途上国の大半は発掘も精製も先進国、たとえばアメリカやイギリスに任せてしまい、利益は独裁者の懐に入ってしまうケースが多いのでは?)

2)エクソン・モービルは「石油は公共の福利に尽くしている」と言い、OPEC(オペック)のオアン・ペレス・アフフォンソは「石油は悪魔の排泄物だ」と吐き捨てた。

3)現在、地球上には4万9千ギガドンの炭素があり、水素、ヘリウム、酸素に次いで宇宙で四番目に多い元素で、他の元素と組み合わさっては数えきれないほどの様々な物質をつくりだす。(ダイヤモンドもその一つ)。

4)石油は天然ガスや石炭と同じく炭素と水素でできたため「炭化水素」と呼ばれる。

5)海中で炭化水素を詰めこまれたプランクトンの死骸は海底の堆積物のなかに山積し、有機物がさらに積もるにしたがい、海底に沈下、埋没。地下数キロで水分は絞りだされ、炭化水素は何百万年という歳月のなかで凝縮され、黒褐色のシート状の岩石と化す。さらに、7千5百フィートを超えると、飽和状態に達し、頁岩(けつがん)あるいは泥岩となる。地球の中心に近づくにつれ、圧力は増し、加熱を受け、さらに何百万年の歳月を経て岩石中の炭化水素は熟成し、大きな分子が様々に分裂、岩石の炭化水素は揮発性を高め、石油と化す。

6)初めて石油に接した中東の人々は可燃性が過剰なため、利用困難との評価しかできなかった。

7)鍋に石油を入れて火をつけ敵と対したのはペルシャ人、矢や槍に石油を塗り、火矢を放つ方法を考案したのはギリシャ人。

8)イスラム諸国はキリスト教徒の侵略に石油を用い、焼夷武器で対応。

9)1941年、日本が東南アジアのゴム園を管理下に置いたため、天然ゴムが欧米に届かなくなり、米国はタイヤを合成ゴムでつくることを考え、パラシュートはナイロン製、戦闘機の窓はプラスチックに変えた。科学者は、諸々の石油利用と、セルロイド、ビニールなどを含め、用途の多様性を示唆した。

10)オクラホマ、カリフォルニアにも石油の埋蔵があったが、大戦の需要の拡大によって、たちまち干上がったため、米国の石油企業、エクソン、デュポン、スタンダード・オイル、シェルは石油を産する中近東を中心に進出、イギリスと利権を分け合った。

11)1952年12月、イギリスのロンドンの街は風が止み、石炭の輸出を主産業としていたため、煤煙が街の空を覆った。無風状態が5日連続し、石炭の成分1千トン、二酸化炭素2千トン、塩酸140トン、二酸化硫黄370トンが充満。スモッグが街中を覆うなか、わずか1週間で44人以上が死亡、結果、1956年、ロンドンは石炭使用を禁止した。(ワトソンが発明した蒸気機関車は石炭を燃料としたのでは?)

12)大戦後、米国では全米州間に高速道路を建設、モータリゼーション文化が米国人を惹きつけ、1955年には5千万台以上の車が登録され、1975年には1億台を突破した。その間、石油を原料とする各種製品が開発され、多様化し、多くの消費財を生んだ。

13)1956年、エジプトのナセルは、先進諸国の資本主義独占企業に我慢できず、スエズ運河を掌握し、タンカーの通過を禁止した。締め出された石油企業は回り道でコスト高となり、これを補うためにタンカーの規模を巨大化した。

14)1960年、中東ではOPECを結成、アルジェリア、インドネシア、イラン、イラク、クエート、リビア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、UAE、ヴェネズエラが加盟。この地域にあった西側諸国の権限は資産ごと、それぞれの産油国の手に渡った。

15)1960年には、世界中の産業機械、自動車を動かすエンジンは、日に2千百万バーレル以上の石油を平らげていた。

16)新たな石油探索のための試掘は博打的であり、成功率は低い。米国内の試掘の90%は的外れだった。

17)1967年、北米大陸の北、ブルドー湾で百億バーレルの油田が発見。

18)1970年代前半、北海に二箇所の油田(160億バーレル以上)が探り当てられた。

「寒さの中へ」

1)1973年までに1日当たり約5千5百万バーレルの石油が出、その半分以上が中東から。イスラエルがパレスチナとの戦争を始めると、OPECはイスラエルを支援する米国とオランダへの石油の輸出をストップし、ためにそれまで1ドルから3ドルだった価格が12ドルまで跳ね上がった。結果、消費者物価は倍になり、失業者も増えた。

2)ヴェトナム戦争で出費のかさんでいた米国は困った末、一人あたり10ガロンの配給制度、暖房器具の設定温度を下げるよう指示。(燃費の低い日本車の販売が伸びるきっかけとなる)。産出国には膨大な利益が入り、経済的に安定する国に変貌した国と、産出国でありながら、ごく少数の支配者が利を独占する国とがあった。一方、米国政府はアラスカ、北海の開発に乗り出した。しかし、新たな試掘は小さな油田ばかりで、期待した量の油田の発見には至らなかった。

3)アラブによる石油の禁輸措置はパニックを惹起したが、OPEC外の産油国からの埋め合わせで、世界市場の石油の流れを7%削減する効果しかなかった。

「ロックフェラーの亡霊」

1)1980年代、インフレが緩和され、アラスカ、北海が増産に成功し、OPECへの石油依存は縮小。

2)1990年8月にイラクがクエートを併合しようとした試みに、米国は圧倒的な軍事力で対応。一方、米国に従順なバーレーン、クエート、オマーン、カタール、サウジアラビア、UAEは1990年から1997年の間に、4百20億ドル分の武器、火薬を提供された。

3)スタンダード・オイル社は解体。エクソン、モービル、シェブロン、アモコ、サノコ、コノコは別々に生き残り、1999年にエクソンとモービルが、2年後にはシェブロンとテキサコが合併。

4)1992年から2002年のあいだ、米国の輸出信用機関は3百億ドル以上を、世界銀行は3百50億ドルを、化石燃料発掘計画のために、途上国へ手渡した。自らの死活に直結するとの認識から。

5)中国とインドなどの国は2020年までに先進国の90%ほどの石油消費をするようになると予測。中国とインドが2なら、西欧は1という比率になる可能性が否定できない。人口増と急激な産業経済の成長が移動手段への需要を高めるだろう。

「的中率を高める」

1)1980年、英国の北海油田がピークを迎え、設備は打ち捨てられた。

2)的中率を援けるために貢献する、あらゆる地質学的な識見を活用、ハイテク器具の開発に注力。三次元地震探査が主力となり、1990年代、5億バーレル以上の油田、ガス田が76も発見されたが、そのほとんどは海底油田だった。ブラジルの国営企業が1980年代半ばに海底油田を発見したことに触発され、米国はメキシコ湾の、深海に石油を求めて探索。結果、1999年に10億バーレル規模の油田をBP社が発見。

3)以後、アンゴラ、コンゴ、赤道ギニア、ガボン、コートジボワール、ナミビアなど、アフリカ西海岸に沿った深海探査が始まったが、発見された油田は一般的に小規模のものだった。

4)米国石油企業は大学へ助成金を出し、「石油地質学者」を糾合して、探査、採取の改善に乗り出す。「傾斜掘り」も、改善策の一つ。おかげで、地下から吸い上げる石油量が20倍に増えた。新たなターゲットに、カナダの流氷の危険のあるニューファンドランドのブルアームが選ばれ、空母5つ分の巨大な建造物が現出、5千人以上の労力が費やされ、1990年代後半までに百万バーレルを超える石油を船上に溜め込んだ。

「余波」

1)北海に聳える鋼鉄のオクシデンタル社のプラットフォームのパイプが二度にわたって爆発を起こし、167人の死者を出した。プラットフォームはスコットランドから120マイルの地点で海底に沈んだ。事故の続発のうえに、タンカーが水面下の岩礁と衝突し、25万バーレルの石油が流出するという事故が起こった。寒帯に棲むラッコ、アザラシたち、何十万が死んだ。

2)2002年秋、ロシアの石油企業、アルファ・グループの系列会社が燃料用重油7万7千トンをラトビアからシンガポールまでタンカーを手配、途中、フランスとスペインが大西洋と接するビスケー湾に入ったとき、嵐に巻き込まれ、船体に亀裂が入り、重油が流れだした。タグボートでタンカーを沖合いに出したあと、古傷までが開いてしまい、船体が裂け、沈没。重油は14の裂け目から3年間にわたり漏れ続け、史上最悪の石油流出事故となった。

3)整備コストの高い、二重船体のタンカーもフランス沖で沈没、海洋生物を油まみれにした。

4)石油を満載した数千の巨大タンカーが毎日5億バーレルの石油を運搬している。世界を行き交う輸送船が運ぶ4分の1以上が石油。10億バーレルの石油を運ぶごとに1千バーレルの石油をこぼしているが、公的責任を回避している事実はほとんど追及されていない。

5)メキシコ湾で、テキサス州沿岸10マイル以内で、これまで800回の石油流出が起こっている。

6)深海の発掘には未知のリスクがある。石油とともに恐竜時代の岩石、古代の水、天然ガス、化学物質の混じった泥が噴出する。北海では長年汚染物を船外に捨てていたが、3億ガロンの有害なスラッジ(汚泥)が百以上の、べとつく山となって海底に堆積し、バリウム、石油、亜鉛、銅、カドミウム、鉛などが海水を汚染している。(垂れ流しは欧州の先進国もやっていた?)

7)深海からパイプで引き揚げられる油は急速に冷却され、やがて長いパイプラインを通過する関連ガスを低温と水圧が乱す。暖かかった気体は凝固し、ハイドレートの結晶と化し、石油の流れを鈍くしてしまう。この悩みの種を解消するためにパイプに断熱効果を施せば、コストがかさむ。海底では、深海生物の生息地が地域的な影響を受ける危険性が否めない。深海での被害は目に見えないため、関係者は真相を把握しようとせず、調査も杜撰。

「石油の呪い」

1)産油国の大多数では、金が入るのは支配層だけ、一般庶民の生活水準は低いまま。また、多国籍企業は途上国の無知を利用、詐欺まがいの契約を交わす。僅かな例外はブルネイ、UAEなど、人口の少ない産油国だけ。また、産油国であるがゆえに、枯渇したときの大きな落差に懊悩する可能性が恒常的にある。(中国は石油を確保するため、協力的な民族には武器を無償供与し、内戦を誘発している。自分だけよければ、途上国の人々がどうなろうが知ったことではないという姿勢は米国の石油企業と同列)。

2)シェルはナイジェリアでの石油産出を円滑に運ぶため、抗議活動を行なう人々に対し、ナイジェリアの軍人を呼び、殺害させたり、絞首刑にさせたりした。シェブロンは試掘、発掘による大気汚染に泣く住民の苦境に同情さえしなかった。米国は企業保護を目的に、ナイジェリア軍に7隻の巡視船を贈与した。こうした途上国の例はアフリカだけではない。コロンビアでは、オクシデンタル社がゲリラにパイプラインを爆発しないという約束で、100万ドルから500万ドルを渡した。

「炭素の危険性」

1)数億年間、大量の岩で封じられていた炭素の半分以上を人類は一瞬で地表に持ち出した。二酸化炭素は大気中に何世紀も残留することがある。

2)1982年以降、エルニーニョは旱魃、渇水、火災、暴風雨を惹起し、2千人以上が命を落とし、130億ドルの損害を出した。

3)ここ1世紀で、北極圏の氷河は40%薄くなり、温暖化による溶けた氷による海の体積が拡大したことで、何マイルもの海岸線を水没させた。地球の海面水位は20世紀のあいだに10-20センチの上昇を記録している。これらの変動は遠い過去に排出された二酸化炭素が原因であるため、この2世紀間の排出量から予想される影響の半分以下に留まっている。気候変動は他の変動のきっかけとなり、それが悪化への展開を激化させる危険性がある。圧力が高まり、巨大スイッチがゆっくりと切り替わるかも知れない。

4)海温の上昇がメタンハイドレートを溶かすことが考えられる。大量の融解は数十億トンのメタンを急速に大気中へ解放してしまう。ハイドレート内のメタンは濃度が高く、一つの結晶は同等の体積の純粋なメタンと比較して160億トンものメタンを含んでいる。1万5千年前、こうした融解が地球上の気温を10度Cも上昇させ、最後の氷河期に終止符を打った。

5)動物には足や翼によって忍び寄る暑く乾いた天候から北へ逃げることができるが、多くの樹林の種は1年に数百フィート以上は広がることができない。温暖化が現在のペースで進んだら、適切なゾーンに留まるには毎年2マイルほど移動する必要がある。取り残されれば、枯れた森林が腐敗し、樹木の中に閉じ込められた炭素が大気中に放たれる。森林が炭素の吸収装置ではなく、排出装置になってしまう。ほんの数度の違いが、地球を緑溢れる良好な環境でいられるか否かを決定する。

6)人類は最後の氷河期が終わり、地球の気温が珍しく安定した時期に誕生した。この安定も終焉に近づきつつあるのかも知れない。

7)深刻化する大気中の二酸化炭素への懸念は、そのまま石油業界の実態そのものへの攻撃となった。

8)ツヴァルは10年に1度か2度のサイクロンには耐えることに慣れていたが、1990年代には大型のサイクロンが7回以上も襲い、耕作地は減少し、水面は上昇を続けている。

9)石油業界に携わる多くの者にとって、気候変動など誇張された、実在しない問題だと考えているし、ために、御用学者に石油業界に有利な発言をさせ、論文を書かせる。そして、業界は地球の温暖化は森林の伐採に罪があると主張し、責任の転嫁を図る。

10)温暖化に関する議論には科学的な裏づけが脆弱であることは確か。地質学的に昔から大規模な地球温暖化があったことは事実であり、今回もある程度は人間の活動によって引き起こされたものかも知れないが、その度合いは地域によってかなり異なる。(人為的な影響と自然の営為とを、量的に示すことは困難)。

11)とはいえ、グレートバリアリーフの60%から95%に白化現象が起こり、インド洋のサンゴ礁、セイシェルズ、アンダマン、プーケット、モーリシャスなども半分が壊滅していることは事実。(沖縄も例外ではない)。

「空タンクで走行」

1)2000年代初めには石油の消費量は増加の一途。埋蔵量を近く上回るであろうことは明らか。石油にまみれた現代の生活様式を真似しようと躍起になっている途上国のグローバルエリート集団の台頭は消費量を急激に増加させ、需要は毎年2%ずつ伸びている。

2)サウジアラビアの油田さえ、50万バーレルの石油を採取するために、百万バーレルの水が同時に出るようになり、国内のどこの油田も同様の現象に悩まされている。

3)これまで、各石油企業は新たな油田発見に努力してきたが、僅かな報酬にしか恵まれていない。

4)「石油ビジネスは死にゆく産業」とはゴールドマンサックス社の言葉だが、だからこそ、僅かに残っている石油には途方もない価値があり、価格は高騰する。枯渇に向かう断末魔といってもいい。

5)政府も企業も、自らが公表する埋蔵量の正確さについて明言せず、常に都合のいい数字を発表する。外部にこれらを査定する独立機関は存在しない。旧ソ連は10年ものあいだ、国内の埋蔵量に関し、20%もの甚だしい過大評価をしていた。

6)石油の最大消費国は米国だが、消費対象は兵器。戦闘機、輸送機、軍艦、戦車、軍用自動車、爆撃機。にも拘わらず、米国軍隊は低燃費の新型エンジンの採用を拒否している。

7)カナダのアルバータには「オイルサンド」と呼ばれる、砂に含まれる石油が存在し、これを抽出することができれば、アルバータはサウジアラビアの確認埋蔵量より多い3千億バーレルを供給できる。加えて2兆5千億バーレルという途方もない量が眠っている「タールサンド」は地球全体で知られている従来の油田よりも規模が大きい。ヴェネズエラのオリノコ地帯にも莫大な量のタールサンドが眠っている。

8)タールサンドは原油と異なり、パイプラインで運搬できるほど便利なシロモノではなく、石油を抽出するにはコストが1バーレルあたり30ドルもかかる。にも拘わらず、石油企業の大群がこの地に押し寄せている。抽出には大量の炭素が大気を汚染する。通常の石油に比べ、6倍の二酸化炭素が排出される。ただ、「水蒸気圧入法」という新工程のおかげで、生産コストは抑えることができるものの、大量の真水を必要とする。そして、汚染物質は地域一帯に広がり、森林の大部分を破壊するほどの酸性雨を降らせるだろう。

「カスピ海での争い」

1)カスピ海は北部海底に横たわる地質学的構造が地震の探査により調査され、結果、長さ200マイル、幅50マイルの一枚岩が発見された。石油で満たされていれば、世界最大の新たな油田の可能性があると喧伝されたが、2001年に業者が試掘すると、硫黄が強く、90億から130億バーレルほどの規模であると推定された。

2)カスピ海周辺には旧ソ連邦解体後、ロシア、イラン、カザフスタン、トルク二スタン、アゼルバイジャンという昔から確執を抱えた国があり、パイプラインを敷けば、チェチェンなどを含め、さらに多くの国に影響がおよぶ。

「新旧の挑戦者」

1)ソーラー発電の潜在能力は果てしない。すべての屋根にパネルを張れば、国民全体の電力消費をまかなえる。再生可能なエネルギー源を秘めるにも拘わらず、化石燃料と比べ技術面でコストが高い。BP社はソーラー部門が世界で二番目の規模、シェル社は風力発電で世界トップ10に数えられるが、こうした試みはクリーン・エネルギーへの過渡期が予想以上に早く到来した際を想定した繋ぎを考えてのことに過ぎない。業界は、ソーラー電力も風力発電も、商業的に化石燃料の代替とはなり得ないと考えている。

2)水素燃料電池、炭坑原子力発電、エタノールなどが太陽光や風力に代わるエネルギーとして考えられているが、環境負荷の軽減、持続可能性については現実的ではない。とはいえ、ヨーロッパではアイスランドをはじめ、ECの域内では水素経済を積極的に推進することを宣言している。ただし、水素を抽出する工場も汚染源である点は悪臭の立ち昇る石炭火力発電所と同列。

3)コストやエネルギー分析だけで、可能性を否定するのは不十分である。気候変動、スモッグ、ガス燃焼、石油流出といった惨事、石油施設周辺の人々や動物の生態系への影響、利潤追求型の石油企業や関連省庁の汚職などの代償は何らかの形で社会にふりかかるだろう。

4)エタノールは水と混じっているため分離が不可能な混合物へと乳化してしまう。発酵させるトウモロコシの栽培にはエタノールの供給量に近いエネルギーが必要となる。つまり、石油を使用しなければエタノールはできず、結局、水素燃料電池と同様、米国人の石油消費量を変化させることはできない。

5)天然ガスが見直されている。とはいえ、ガスの輸送は困難。通常のタンカーによっても輸送は不可。業者はガスを圧縮、または冷却して輸送、販売する方策を探っている。

「瀕死の苦悩」

1)石油が世界的に枯渇するまえに、石油消費が地球環境を決定的に破壊してしまうまえに、我々は次の時代へと移行していく術を手に入れることができるだろうか。新たな技術革新の模索が救いの手を差し伸べてくれるだろうか。

 本書を読んで、多くを学ぶことができたが、驚いたのは訳者が23歳の女性であることだった。また、わが国が化石燃料に恵まれていないことから、逆に、新しい技術革新への努力を惜しまず、世界をあっといわせる新たなエネルギー源が提案されることを期待したい。

 

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