祖国よわたしを疑うな/曹石堂著

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「祖国よわたしを疑うな」 曹石堂(中国人)著
副題:
「幸福は敵国軍隊のなかに、安全は祖国監獄のなかに」
「政治犯から大学教授となった『兵隊太郎』の戦後」
日本経済評論社 2006年8月初出 単行本

 
 1930年代、日本陸軍の満州への侵略、中国攻撃が始まる。

 そうした戦乱のなかで、一部隊を率いる隊長が一人の中国孤児を可愛がり、養父となって日本に同行、大学教育を受けさせる。

 戦後、1953年、「祖国の発展に寄与したい」との情熱をもって帰国したものの、待っていたのは過酷な政治犯罪者としての扱いであり、文革をはじめとする数々の仕打ちに耐え続ける。20年後、日中国交回復によって、復権が認められ、訪日の機会を得、三人の子供を日本に留学させるまでの(幼児時代から60歳までの)自分史を描いたもの。

 感ずるのは、毛沢東が文革を通じて無知な人間を評価の対象とし、インテリ層を徹底して叩いたことが、中国の発展をどのくらい阻害したかということ。と同時に、鄧小平の偉大さもあらためて想起される。

 さらに、本書は「中国人にも、こういう人がいる」という感慨を強くもたせ、同時に、「中国と日本の関係」を別のアングルから判断してみようかと思わせるところに価値があるのではないだろうか。

 少なくとも、一読の甲斐はあったことを記しておく。なにせ、「祖国よ、わたしを疑うな」というタイトルが胸にぐさっとくる。


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