私の部下はイギリス人/デンゾー高野著

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「私の部下はイギリス人」 デンゾー・高野著
2006年4月 太陽企画出版初出

 

 連続3回、イギリスに関する著書に接した。

 私個人はアメリカ、カナダには何度も行ったが、イギリスには行ったことがないし、行きたいと思ったこともない。それは、「イギリス人がことさら人種差別が強く、日本人嫌いだ」という固定観念をむかしから持っていたからだ。

 とはいえ、人種差別と訴訟は、アングロサクソンが牛耳る国に行けば、日常茶飯事で、そういう国で仕事をする日本人出向者はとくに訴訟の面で苦労する。

 作者は初めは商社の、途中からはメーカーの駐在員として、世界各地で仕事をしてきた強兵(つわもの)であり、彼が語るイギリス人、イギリス社会には耳を傾けるに充分な経験がある。

 以下は、学んだ事、記憶に残った事、(  )内は私のコメント:

1.イギリス社会にあっては、常に「Jap」と「Nip」「という侮辱語が耳に入ってくる。「おまえ、おれをJapといったな」と詰問すると、「いや、Chanpといったんだ」とごまかす。Chanpとは、仲間に対して使う言葉。

 (日本人ははじめから白人に対してコンプレックスをもっているし、同じアジアの黄色人種に対しては優越意識をもっている。そのことは日本人自体が人種差別が好きなことを暗示している。そうした根性が白人に対し一層の劣等感を招いているようにも思われる。また、白人に対し一目も、二目も置いているのは日本人ばかりではなく、白人以外のすべての人種に共通している。ボスに対し、相手が日本人ならば平気で「Good Morning, Jap」と言えるのがイギリス人で、それだけ日本人に対する侮辱心は根が深い)。

2.白人に対する侮蔑語には「White trash」(白いくず)「Poor White」(文無しのくず)という言葉がある。また、イギリス人に対する差別語には「pom」「pommy」などがある。
 (イギリス人が外国人に対して与えた侮辱語は数知れない)。

3.同じイギリス人でも年齢により、態度や姿勢に違いがある。年寄りのなかには鼻もちならない人間もいるが、優雅で感じの良い人もいる。35歳前後のイギリス人は大英帝国時代を知らない。若手は「アメリカの51州だ」と言ったり、「ハイテク機器を次々に送り出してくる日本人が恐ろしい」という感想を漏らしたり、「車はドイツ車が最高だ」と夢中になったりしている。また、若い人のなかには「Jap」が差別語であることを知らずに使う人も少なくない。この事実は蔑視語だった「ヤンキー」や「ヤンクス」がまともな米語になった例もあり、Japもそうなる可能性がなくもない。

4.サッカーでよく話題になる「Fooligan」は「Fool」(バカ)が語源で、社会の落ちこぼれを意味する。

5.中国でも外国文明に対しては差別的だった。「匈奴」「蒙古」「犬戎」「夷てき」、1700年前にすでに日本人を「倭人」(チビ)「倭国」(チビの国)と別称を与えている。(一方、琉球には「真っ青な海に浮かぶ珠玉の国」という言葉を与えている。日本人は「沖の海に縄の如く連なる島」という侮辱語に近い言葉を与えているのに。中国に長年頭を下げて貢物を捧げ続けた琉球と、遣唐使を途中でやめてしまった国への評価の違いであろう)。

6.イギリス人のなかには、太平洋戦争が始まったばかりの頃、シンガポール、マレー半島、ビルマ、香港などからイギリス軍が日本軍に追い出され、戦艦「プリンスウェールズ」まで撃沈された経験を記憶している人がけっこういる。

7.日本人がイギリス人と最も異なる特質は、人と違うことをいやがり、周囲に同化していたい、熱しやすく冷めやすい、一時的流行を追う、そういう性格が集団的ヒステリーを呼び、太平洋戦争にまで至った。(日本人が没個性的なのは、出る杭は打たれるという社会体制が長く続いた結果、遺伝子にまで組み込まれてしまったのではないか)。

8.イギリス人はダメモトで汚い手をしばしば使う。騙されるやつが悪いという思想が根づいている。そのために、口が達者になる。(そういう国民性をもつイギリス人に品格や騎士道精神があるとは到底思えない。まるで、後進国並みではないか)。

9.狩猟民族は略奪、遊牧社会を経て、商業経済に発展したから、あくまで単独主義である。一方、農耕民族は互いに一致協力して刈り入れを行わざるを得ないから、村には共同体が生まれる。(だから、日本人は自らの個性をできるだけ抑制し、仲間に同調するのが性癖になってしまった?)

10.アンゴロサクソンと商売するとき、相手は性悪だと割り切る、利によって動くことを知っておく、善意を期待してはいけない。

 (内容的には、日本の政治家や一部の財界人、官僚を相手としているのと大差がない。日本国内のいたるところに、監視者もなく、監視カメラもなく、自動販売機が置かれる日本はやはり今でも平和なのだ)。

11.中国では孔子や孟子が出、彼らの口にした言葉が日本人に膾炙しているが、韓非子の「性悪説」をもっと真剣に読むべきだった。イギリス人の言う平等、対等という感覚は同じ白人社会のなかだけに限られている。

 (とはいえ、アイリッシュを最もバカにしたのはイギリス人だし、オランダ人に対しても「Dutch Wife」だとか「Dutch Account」とか同じ白人に対しても優越意識を彷彿とさせる言葉が多い。アイリッシュに対してはさらに凄まじい対応、揶揄に終始する。要するに、イギリス人はトップ意識の強い生意気で鼻持ちならない生き物なのだ)。

12.イギリス人はおしゃべり。(空港における中国人同士のおしゃべりも相当なもので、閉口する)

13.日本では、武士階級は姿勢がよく、町人は挙措動作に落ち着きがなく、身分の上下に敏感で、やたらにぺこぺこする。百姓は一日中野良仕事をするため、腰が曲がり、背が伸びない。戦後、いちばん体格が良くなったのは女性であろうが、日本人は外国で見れば見るほどチビであり、顔が扁平で、格好が悪い。むかし、川崎大使が英語で書いた「Japan Unmasked」(日本の素顔)は今でも生きている。

14.蟻を殺すための粉末剤を買ったところ、薬の名前が、なんと「Nippon」。日本人は団体旅行で、互いにくっついて蟻のように一緒に行動するイメージからの命名かも知れない。東京に来たことのあるイギリス人は新宿や渋谷の雑踏、満員電車の様子、公団住宅のアパートが長大な連なりなどを見て、蟻を連想するらしい。

15.英米ではファースト・ネームで呼び合うが、ドイツやフランスではファミリー・ネームで呼び合う。日本では、近所ではファミリーネームを使うが、会社では職位を使う。

 (体育会系にいた連中は、先輩はいつまで経っても先輩、後輩が社会的に立場が高くなっても先輩には頭が上がらない、変な国)。

16.在留邦人は現在ではトータル百万人を越えている。アメリカが最も多く、次いで中国、ブラジル、イギリスの順。

 近年、外国人に仕えたり、外国人を部下にして使うケースはますます増える傾向にある。白人社会に出向する人の苦労と、発展途上国に出向する人の苦労とでは、互いに比較を絶するものがあるだろう。私の知己もニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、ヴァンクーバー、ロンドン、パリ、ジュネーブ、デゥッセルドルフ、マドリッド、バルセロナ、ローマ、バリ、シンガポール、シドニー、香港、グァム、サイパン、デンパサール、バンコックなどなどに出向したし、現在も出向している。それぞれがそれなりの苦渋や辛酸を舐め、蒙を啓かれ、それぞれの土地に慣れていったに違いない。その意味で、英語のマスターは必須ではあるが、それはむしろ本書で強調するまでもないこと。発展途上国に出向した人間が現地の言葉を覚えて帰国しても、出向した国によっては、何の役にも立たないことも事実。

 作者は変に気取った構えをせず、おもしろおかしく経験談を綴っている。その意味で、読んでいて飽きがこない。


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