私説・日本合戦譚/松本清張著

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私説・日本合戦譚
「私説・日本合戦譚」 松本清張著 文春文庫

 
 本書は国内の歴史的な合戦に関する内容だが、これまでに読んだ同種の本と比較して、それほどの違いも差もない。

 ただ、「いまどきのサラリーマンが徳川家康を読んでも、屁の突っ張りにもならないだろう」との所感には若干の驚きがあった。なぜかといえば、サラリーマン相手に、徳川家康の本は一時期ベストセラーになったからだ。「日本という土壌のベースにいかにして世を渡るか、いかにして世に出るか」がテーマだったと記憶する。

 バブルがはじけて後、終身雇用が崩壊し、定期昇給が期待できなくなり、いわゆる重厚長大企業で勤務する社員にロイヤルティを尽くして勤め上げるという姿勢が根底から崩壊したため、家康が教師の座から降りたということだろう。

 また、「歴史には重大な運命を左右する糸が一瞬間だけまったくつまらぬ人間に握られることがあり得る」という言葉がかつて「ナポレオンのウォーターロー」を書いたシュテファン・ツヴァイクの言葉として紹介されていることには学ぶことがあった。

 合戦ものは、しかし、だれがどう書いても、はずれものはないだろう。

 最後に、松本清張の作品で、事前にとことん資料を調べたうえで書いた社会性を帯びた作品はやはり一級品である。むしろ、そこにこの作者の真髄が発揮されている。


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