約束/石田衣良著

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約束

「約束」 石田衣良著
角川文庫  2007年6月初版

 

 本書には七つの短編が収められ、どうやら読者を泣かせる内容らしいことが裏表紙の説明で理解できる。

 私個人はこの作者が色々な賞に恵まれた作家であることは知っているが、書いたものに接するのは初めての経験。

 初めの「約束」には感性の繊細さが感じられるが、解説を担当した北上次郎氏が賞賛した「青のエグジット」などは完全な手抜き作品だとの印象を受ける。身体障害者にとって水中空間に入ることの最大の悦びは重力からの解放に尽きるもので、作者はそうした経験者へのインタビューすらしていなかったように思われ、真実から離れている感が拭えず、そういう目で見ると、どの短編も、実態に迫らぬ「つくりもの」のイメージが強くなって、この作家の作品にもっと触れたいという欲求を喪失させる。

 文章は軽妙といえば軽妙だが、重厚さには欠け、まるで中学生を相手に書いているように思われ、受賞作品が多いと聞けば、受賞作品の価値が低下しているとしか思えず、ことに短編それぞれの内容からいって、深刻なストーリーが軽くなり、癒そうとの意図があるのか、矛盾するものすら窺えた。

 小説は所詮「つくりもの」とはいえ、「つくりもの」であることを感じさせない創造力がないと、真実味の欠けたストーリー展開で終わってしまい、ただのエンターテイメントとしての記憶にしかならないし、むろん、感動をもたらすこともなくシラけてしまうだけに終わる。

 同氏のフアンには申し訳ないが、思いつきをちゃらちゃら書いただけという感が否めず、時間を損した気分で読了した。


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