純金争奪時代/亀井幸一郎著

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書評:ためいき色のブックレビュー-純金

  「純金争奪時代」 亀井幸一郎(金融、貴金属アナリスト)

  副題:金に群がる投資家たちの思惑  

  帯広告:金高騰はまだ続く!

  2010年3月25日 角川SSC新書より初版 ¥760+税

 昨今の金価格の高騰はまさに「金は危機を嗅ぎつける」という言葉を裏書するような動きを見せている。むろん、金価格の上昇はUSドルに対する不信のみならず、ユーロに対する不信にも根をもち、過去、あまりゴールドを買わなかったアメリカ人やヨーロッパ人がゴールド買いに走っている事実は見逃しがたい。

 著者によれば、ドイツでは空港その他にゴールドのコインなどが買える自動販売機までが設置され始めたという。

 金に対する需要はこれまで(1)宝飾品として先進国が主体となった需要、(2)通貨に代わる価値として後進国が主体となった需要のニつに分けられるが、2009年には投資需要が宝飾需要を逆転した。

 (発展途上国の人間は自国通貨が過去に何度もインフレを経験し、貨幣が紙くず同然になった経験があり、ために通貨というものを根っから信用していない)。

 外貨準備高の最も多い国は、2009年末の段階で、中国が2兆3991億ドル、第二位は日本の約1兆500万ドル、いずれもアメリカの国債を中心としたドル資産。一方、日本の債務先となる国債の買い手は日本人自身であることで、その事実が安心感に繋がっている。

 (とはいえ、債務を減らすための具体策を示すことのできない行政にも問題がある。ただ、これを消費税、所得税、法人税のアップなどで補おうとすると、国民からそっぽを向かれ、選挙には勝てないというジンクスもある)。

 中国政府は個人にゴールドを買うよう誘導している。この政策には、国内の富裕層を中心にだぶついた貨幣が不動産投資に向かい、インフレ率を高めるよりゴールドを買わせることで個人マネーの吸収を図る目的があり、2010年の後半期には、人民が直接ゴールドが買える仕組みにする計画。

 

 ゴールドの買い手として名のあるインドが200トンの金塊をIMFから買い、続いて、モーリシャスが2トン、スリランカが10トン買ったことが世界各国の思惑を刺激し、ヨーロッパの個人を巻き込んだばかりか、機関投資家が金鉱山株式取得などによるヘッドファンドを志向した。さらに、世界各国の中央銀行がゴールドの買いに回っている。

 金価格の今後の動向は、偏に、アメリカの経済立て直しがうまくいくかいかないかにかかっている。具体的には、地方銀行の抱える不良資産の買取り、アメリカの財政投融資に使われるドル紙幣の印刷を、自国の金利を上げながら、そのうえ経済状態を傷つけずに行なうことができるか否かにかかっているという点は、全く同感。

 (それでなくとも、2010年にはメキシコ湾のイギリスBP社による海底油田の流出事故を解決できぬまま数か月が過ぎようとしている)。

 2009年末には1オンスあたり1、200ドルを超え、史上最高値をつけたが、雇用が順調に回復し、利上げできなかった場合には、さらに高値を目指し、1,300ドルも充分にあり得る。むしろ、1,300ドルは必然と考えておいたほうが当を得た判断かも知れない。

 (ただ、日本円による金価格は円の対ドル為替レートに影響され、必ずしも1オンスあたりの米価に追随しないため、ややこしい面がある)。

 (もう一つ、最近目立つのは、貴金属を扱う業者からいきなり電話セールスが入り、「家庭が持っている貴金属を売ってくれないか」というアプローチが増えていることで、個人の家をこういう売買対象にして自宅までやってくる業者はろくな背景をもっていないと考えたほうが安全であり、得策でもある)。

  


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