蛍の行方/諸田玲子著

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「蛍の行方・お鳥見女房」  諸田玲子著
新潮社 2003年 単行本
2006年11月文庫化初版

 

 過去に、「お鳥見役」を題材に用いた時代小説はなく、江戸期に将軍や藩主が「鷹狩り」を行なうために、この役目を担う人間が必要だったことを本書を通じて知った。

 江戸後期には江戸近郊に六ヶ所の鷹場が存在し、鷹狩りを楽しむための野鳥を保護するため、お鳥見役は鷹場周辺の自然環境に目を配り、村では目付け的な業務を担っていたという。但し、お鳥見役は鷹を育て、狩りをするように訓練する「鷹匠」よりも身分は低かった。

 江戸期の身分階級に関し、あらためて関心を惹かれたが、その細かさには一驚を喫し、「これは日本的カーストだな」とも思わせられた。これまで時代小説を読んで、このような感想を持ったことはなく、認識を新たにすることとなった。「士農工商」などという言葉は江戸初期にはなかった事実を知ったことも新たな知見となった。

 この作者の作品に接したのは初めてだったが、大家族を鳥見役の女房が中心になって、けなげに生きる姿が読み進むほどに読み手の心に熱いものを感じさせ、自然に癒されていることに気づく。

 文章は爽やかで流麗、構成も申し分なく、久しぶりに一気読みさせられた。


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