読むだけですっきりわかる日本地理/後藤武士著

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「読むだけですっきりわかる日本地理」 後藤武士(1967年生/日本全国授業ライヴィ主宰)著
帯広告:カリスマ塾講師・日本人だからこそ知っておきたい日本列島まるわかり
2009年6月19日 宝島社より文庫書き下ろし初版 ¥457+税

 

 本書はウラ表紙に、「バリエーションに富んだ日本という国の地理はおろか、産業も季節も、特産品も、気候、地名、交通の便も、お国自慢も、マンガのように楽しく語ります」と書かれていることに嘘はなく、地理の元々好きな私も北から南まで説明する手法はマンガチックでありはするが、斬新で、面白い。

 スムーズに読者の目に入ってきて、なんとなく判った気持ちになるところも悪くない。

 テレビ局の受信圏内で地域を分類したり、キー局によって左右されたりするところも、新しい区分けで、これらの説明にも納得がいく。

 ケチをつけるわけではないが、静岡県に安倍川が、新潟県に糸魚川が、香川県に栗林公園がそれぞれ抜けているのが気になった。さらに、アメリカの軍地基地がすべてカットされていることには格別な意味があるのか、これも気になった。

 戦前、日本の製鉄所は中国から鉄鉱石を輸入し、九州の三池炭鉱や筑紫炭鉱の石炭を火力として製鉄を製造していたとは初耳だった。

 作者は宮崎県の元タレント知事がその人気に乗っかって地元産物の宣伝する姿が気に入らないようだが、同じタレントでも、誰でもができることではないし、現実に地元産のあれこれの販売に大きく寄与していることは事実で、一生懸命やってる姿は心を打つし、それはそれでいいではないかと私は思う。たとえば、千葉県のどうでもいいような知事に比べたら、格段の違いだ。

 かつて、薩摩藩が琉球王国を武力で抑え、全島から税を取るよう琉球王を威嚇し、それに堪え切れず石垣島でオヤケアカハチという男が反乱を起こしたことは知っていた。

 さらに、宮古島では人頭税のための石を置き、背丈が石の高さを超えたら税の対象になり、与那国島ではクブラ割りという制度があり、妊婦には海岸で亀裂の入った岩から岩へ飛ぶことを強制し、妊婦が落ちれば、妊婦と孕んでいる子の二人を間引きしたことになり、男らは突然ドラが鳴ると、決められた場所に飛んで行かねばならず、遅れてきた者(大抵は障害者か老齢者だった)が殺されるような過酷な仕組みをつくらざるを得なかったことも沖縄の歴史から学ぶことができる。

 もっとも、薩摩藩が対象とした税は必ずしも金ではなく、牛皮であったり、ゴザであったり、奄美大島だったら大島紬(つむぎ)であったり、夜光貝(韓国へは螺鈿細工の材料として輸出していた大型の巻貝)だったりした。(今でもこの貝は中身も美味だけれども、貝そのものの方が根が高い)。

 薩摩の武士が琉球の別嬪さんに手を出すため、その対策として、未婚の女性は既婚を意味するタトゥーを手の甲にしたもので、薩摩武士はやりたい放題をやりながら、一方で、税による国庫の潤沢と、琉球経由流れてくる外国の情報をも入手していた。その事実がなかったら、薩摩藩が長州を援けたり、予め火器を大量に入手し、薩英戦争に逡巡しなかったり、官軍の指揮を担い、あれほど簡単に幕府軍に勝つことはできなかったであろうと私は思っている。明治維新は琉球が知らぬ間にかかわることになっていたという考えであり、少なくとも、琉球が存在しなければ、維新は1868年には実現しなかったであろう。

 日本を開国させたペリーだって、来日する都度、必ず、琉球の那覇港に寄ってから、浦賀に来ているし、二度目はいきなり東京湾に侵入している。

 以上、本書の書評からは遠い「琉球の紹介」になってしまったが、本書がおもしろくなかったとの意ではない。


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2 Responses to “読むだけですっきりわかる日本地理/後藤武士著”

  1. withyuko より:

     私は、同じ著者の「すっきりわかる日本史」を読みましたが、歴史の流れと重要な事件だけを簡単に説明してありとてもわかりやすいと思いました。
    歴史や地理が苦手な人や学生さんにはこのシリーズいいですよね。
    琉球の人頭税の話は沖縄の離島に行くたびによく耳にすることでしたが、琉球がなければ明治維新は起こらなかったということまで考え付かなかったです。琉球は薩摩からも中国からも支配され、独立した国だったのに日本になってしまい、今は基地問題ですもんね。
     私は歴史よりも地理はもっと苦手なので地理の本も読んでみたいと思いました。

  2. hustler より:

    「琉球」、「薩摩藩」、「明治維新の成就」の関連はあくまで私の私見です。でも、けっこう自信のある私見です。

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