誰か/宮部みゆき著

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誰
  「誰か」  宮部みゆき(1960年生)

  文春文庫  2007年12月初版

 基本的にミステリーものがあまり好きでない私にとって、松本清張と宮部みゆき、そしてアメリカ人のパトリシア・コーンウェルだけは例外であり、宮部作品では「火車」「理由(わけ)」「模倣犯」と、「宮部みゆきが選んだ松本清張作品」を過去に読んだ。そして、清張作品のなかで最も好きな作品が「西郷札」という点は私と同じ。

 本書について、忌憚なく評すれば、描写が丁寧すぎるためか、プロットやフレーズが多いせいか、読者を一気読みさせる牽引力にやや弱い感がある。

 とはいい条、解説者が「本作品には二面性がある」という表現をしているように、謎が起承転結の「結」に向かって次第に肥大していく手法はさすがに見事というほかはなく、年齢を重ねた分がそのまま作品の重量感を生んでいる。

 なかで、「口の堅い人間は才気走った人間より貴重で、絶滅種になりつつある」という言葉が心に残った。というのは、海外生活経験のある私には「日本人ほどおしゃべりで、人のプライバシーをペラペラと紙のようのしゃべる民族はいない」との思いが元々あるからで、欧米人から見たらそれが日本人の最大の欠点に映るからでもある。

 自衛隊で、米軍兵器に関する機密漏洩事件などは、論外というより、言い訳が通じない類の「恥」というほかはなく、いわば「切腹もの」である。唯一の頼みである米軍からの信頼を失いかねない問題だ。

(米軍の内部からリークする軍事機密が最近はかなり増えているらしく、インターネットを使った機密漏えい事件は今後も世界的な取り組みが必要になるだろう。いい歳をした爺さまや婆さまが国会で議論できる対象ではない。時代はあらゆる意味で急速に変わりつつある。

 本書にはさらに、「この人ほど笑顔が似合う人で、この人ほど笑顔の在庫の少ない人も珍しい」という表現などがあり、宮部みゆきならではという気がし、脳裡に深く刻まれた言葉となった。私はこういう表現に痺れてしまう。


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One Response to “誰か/宮部みゆき著”

  1. flighty より:

    いつも興味深く読ませていただいています。
    今読んでいる本がもうすぐ終わりで、
    次にちょうどこの本を読んでみようかと考えていたところでした。私もミステリーがあまり好きではないので迷っていますが、こちらで書評を読んでみて興味が湧きました。

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